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 強豪校の近江と彦根東が対戦する「メモリアルゲーム」が6月12日、滋賀県立彦根球場(彦根市)であった。試合に出場する機会が少ない3年生たちの試合で、7月7日に開幕する夏の大会でベンチ入りができない選手が多い。選手たちは最後まで、熱い戦いを見せた。

 近江は五回の艾原(よもぎはら)壱盛選手の犠飛で、六回は松田羽琉希選手の二塁打で各1点加えた。3点を追う八回、高岡真年選手の適時打で1点を加え、なお2死満塁。打席に立った山崎旺太朗選手がとらえた内角の変化球はセンター前へ。走者2人が生還して同点となり、篠原大地選手の二塁打で逆転して7―5で競り勝った。

 近江は昨夏の甲子園8強で部員は100人を超える。試合後、同点打でチームを勢いづけた山崎選手は「自分が出られる最後の試合だと思ったので打ちたかった。最高の気分」。多賀章仁監督も「あのヒットがなければ勝てなかった。よく打った」とたたえた。

 山崎選手は小学1年生で野球を始めた。公式戦の出場経験はない。でも仲間と試合に出たい気持ちは強かった。冬から春にかけてスイングの速さを意識し、毎日1千本の素振りを欠かさなかった。

 それでもレギュラーの壁は高くて厚かった。残された時間の中で貢献するには――。春の県大会直前、多賀監督に思い切って申し出た。「ボールボーイをやらせてください」。ベンチ横で控え、ファウルボールの回収などの役割がある。レギュラーと試合球場に移動もできる。1、2年生の夏はスタンドからの応援。最後の夏は仲間の一番近くで応援したくて決心した。

 有馬諒主将は「おとなしくて、意見を主張するタイプではなかった。ボールボーイを志願したときは驚いた」と振り返る。

 以来、ボールボーイとして春の県大会や近畿大会に出た。50メートル6秒台の脚力を生かした素早い動きで試合を支えた。役割に徹し、チームが好機でも一喜一憂は控える。その分、心の中で「みんな打て!」と鼓舞している。日ごろは自らの練習時間を削り、ノック用のボールを渡し、タイムキーパーなどを務める。

 この日のスタンドでは、父親の章基さん(48)と元彦根東野球部員で香川県から駆けつけた兄凜太朗さん(19)が応援した。章基さんは「レベルが高い選手の中で頑張った。適時打はご褒美でしょう」。有馬主将は「旺太朗のおかげで大会前にチームの一体感が増した」と気を引き締めた。

 仲間との本番はまもなく始まる。山崎選手は「チームを支え、甲子園を目指します」と力を込めた。(北川サイラ)