エジプトのムハンマド・ムルシ元大統領が17日、開廷中のカイロの刑事裁判所で倒れ、死去した。67歳だった。イスラム組織「ムスリム同胞団」出身のムルシ氏は、ムバラク政権の崩壊を受けて2012年に行われた大統領選で当選したが、翌年、同胞団を敵視する軍に拘束された。裁判所ではムルシ氏をめぐる裁判が続いていた。

 検察当局の声明によると、ムルシ氏は法廷で5分ほど発言した直後に意識を失って倒れ、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は明らかにされていないが、地元メディアは心臓発作だったと伝えた。

 ムルシ氏はエジプト初の文民大統領として、大規模デモ「アラブの春」の混乱から国を立て直すことが期待されたが、政情不安や経済の低迷が続き、13年7月、軍に身柄を拘束された。

 カイロの刑事裁判所は15年6月、「アラブの春」の最中に多くの受刑者を刑務所から脱獄させたとして、ムルシ氏に死刑を言い渡した。破棄院(最高裁に相当)は16年11月、死刑を破棄して裁判のやり直しを命令。刑事裁判所ではこの裁判と、一審で終身刑となった別の裁判についてやり直しが進んでいた。

 同胞団系の自由公正党はフェイスブックに発表した声明で、ムルシ氏が「当局に故意に殺されようとしている。体調は悪化しているが治療も受けられない」と述べたことを紹介。また、同胞団に融和的なトルコのエルドアン大統領は「ムルシ氏は殉教者」と述べて哀悼の意を示しつつ、シーシ政権を暗に批判した。(カイロ=北川学)