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 大津市の交差点で車同士がぶつかり、信号待ちをしていた保育園児ら16人が巻き添えで死傷した事故。左足骨折などの重傷を負った土井鈴菜ちゃん(3)の両親が弁護士を通して、朝日新聞の取材に文書で応じた。心身に深い傷を負った悔しさなどがつづられていた。

 文書は母親がA4判で5枚にわたって記した。鈴菜ちゃんは左足と骨盤の骨を折り、ギプスで固定された入院生活を続けているという。

 「事故当時のことを思い出しながら、胸が張り裂ける思いで書かせて頂きました。事故で亡くなった子どもたちや私たちを含め、傷ついた方々の思いが無駄にならないよう、皆様に伝わればと思っています」との書き出しで始まっていた。

事故当日について

 保育園から携帯に電話があったので出ると、担任の先生の声で「お散歩の途中で事故に巻き込まれました。今、順番に病院へ搬送されているので、搬送先の病院が分かり次第、連絡します」。いつもとは明らかに違う様子でした。職場の友人から「ニュースに出ている!」とLINEが入り、詳細も何も知らなかった私は初めて、事の重大さに気づきました。

 救急救命室の中に入ると、娘は検査をされている最中。私たちの顔を見て「ママー!」と大泣きしていました。私も娘の顔を見て手を握り泣き崩れました。「ママ、痛い! 痛いー!」と言っていましたが足が折れているからか、動けない様子でした。

 小さな手に点滴がつながれ、あごには大きな擦り傷。左おでこにはたんこぶができていました。見た目では分かりませんでしたが、医師から左大腿(だいたい)骨の骨折と左骨盤の骨折、背中にも打撲痕があったと聞きました。動かせる状態ではなかったので、私は確認ができませんでした。

直進車の運転手に対して

 他者からすれば「単なる交差点での右直事故」なのかも知れません。私はもっと注意をはらえば、減速を視野に入れていれば事故は免れなくとも、ここまでの甚大な被害にはならなかったのではないかと思います。私たちの気持ちの上では、右折車同様の厳罰に処されるべきだと考えています。ただ処分についての検察官の判断は受け止めようと思います。

運転手に心がけてほしかったことなどについて

 2人のドライバーが心がけるべきだったことは、運転をする人間としては当たり前のことです。「前を見て運転をする」「わき見運転をしない」「おごりの気持ちで運転をしない」「危険予測運転をする」など当たり前のことです。

 事故現場は、通勤経路なので、この先も毎日通ることになると思います。強引に右折してくる車も、暴走してくるトラックも意識をしていない人たちがたくさんいるのです。

 免許証を手にした日から、誰しもが加害者になる可能性は十分あり得ます。「優良運転者だから大丈夫だ」ではなく、優良運転者ということは当たり前のことなのです。免許証の色や過去に一度も失態がないから、と自分の運転を過信せずに運転して欲しいと願います。

 この事故を通して、少しでも多くの方々が「運転をする」ということに対して、意識を変えてくださればいいなと思います。ハンドルを握る前に、このような事故で亡くなった、傷ついた方々のことをどうか思い出してください。(安藤仙一朗、比嘉展玖〈ひらく〉)

     ◇

  〈大津市保育園児ら死傷事故〉 5月8日午前10時15分ごろ、大津市大萱(おおがや)6丁目の県道交差点で発生。右折しようとした乗用車と、直進してきた軽乗用車がぶつかり、直進車がはずみで道路を外れ、歩道上で信号待ちをしていた園児の列に突っ込んだ。園児2人が死亡し、1人が重体、園児10人と保育士3人の計13人が重軽傷を負った。大津署は2人の運転手を逮捕し書類送検。大津地検は右折車を運転していた新立(しんたて)文子被告(52)を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)罪で起訴した。一方、直進車の女性(62)については事故の主因は右折車にあり、刑事責任を問える過失は認められないと判断。嫌疑不十分で不起訴処分にした。