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不妊症(下)

 近年、なかなか妊娠しないというカップルが増えています。

 先日公表された2018年の厚生労働省の人口動態統計によると、平均初婚年齢は夫が31・1歳、妻が29・4歳で、第1子の出生時の母親の平均年齢は30・7歳となり、晩婚化・晩産化が進んでいます。女性が妊娠しやすい時期は20代と言われており、30歳を超えると自然に妊娠する可能性は少しずつ低下し、35歳くらいから急激に低下します。それは、自然妊娠でも、人工授精や体外受精などの生殖補助医療の場合も同じで、日本産科婦人科学会が16年に発表した生殖補助医療のデータからも、35歳を境に妊娠率が低下し、流産率が増加しているのがわかります。

 さて、不妊症を予防することはできないのでしょうか? 答えは、「ノー」でもあり、「イエス」でもあります。

 「ノー」の理由としては、すでに述べたように、年齢が非常に大きな割合を占めます。卵巣機能に個人差はありますが、胎児期に最大数となっていた卵胞数は決して増えることなく、一日一日ヒトは平等に年齢を重ねていき、卵胞数減少の一途をたどり、35歳くらいから徐々に卵巣機能は低下し、やがて閉経を迎えます。これだけはどうやっても逆らえません。

不妊症を防ぐための対策は

 では、なぜ「イエス」と言えるのか。不妊症の予防に効果があると考えられる対策について説明しましょう。

 まずは禁煙です。喫煙は卵巣機能不全を引き起こし、40歳未満で閉経を迎える早発閉経の一因となり、正常な排卵ができなくなる可能性があります。さらに無事に排卵して妊娠に至ったとしても、流産・早産の原因となるため、妊娠の維持が難しくなります。出産後も新生児の乳幼児突然死症候群の原因とも言われており、妊娠前からの確実な禁煙は必須と言えます。

 次に、性感染を予防することも大事です。特にクラミジア感染は避けたいところです。骨盤腹膜炎を発症すると、治癒した後も主に卵巣・卵管周囲を中心に癒着を引き起こし、排卵した卵子を卵管がキャッチできなかったり、受精卵を子宮内に運べなかったりと、卵管因子による不妊症を呈するのが典型例です。

 そして、適正体重(=身長(m)の2乗×BMI22)を保つことも大切です。肥満体形だけでなく、極度にやせている場合も排卵がうまくできないことがあります。

 そのほか、過度のアルコール摂取、生理不順や無月経を引き起こすほどの精神的・身体的ストレス、ある環境因子にさらされることで卵巣機能が低下することも不妊症の原因になることがあります。環境因子については、特定することはなかなか難しいのですが、がんに罹患(りかん)した際に使用される抗がん剤や治療用放射線などが例に挙げられます。

男性も取り組んで

 これら不妊症のリスク因子に挙げられていることは、女性だけの問題ではなく、男性についても当てはまります。予防対策は女性だけに求めるのではなく、カップルで取り組むことに意味があります。

 年齢に逆らうことはすごく難しく、今の医学ではほぼ不可能です。しかし、禁煙したり、適正体重を維持したりすることは、今日からでもできることです。不妊症治療をしていると、健康的な生活をしようと心がけ、日々の生活を正すことだけで自然妊娠するカップルを見受けることがあります。ぜひ、できることから不妊症を予防してみませんか。

<アピタル:弘前大企画・男性も必読! 産婦人科医が語る女性の一生>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座助教 横田 恵)