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 ひきこもり状態にある人が、家庭内で暴力を振るうようになったとき、家族はどうすればいいのか。東京都練馬区で元事務次官が長男を殺害したとされる事件は、改めて問題の深刻さを突きつけました。しかし、20年以上、問題に向き合ってきた精神科医の斎藤環(たまき)筑波大教授は、「解決策はある」と言います。

まず背景を理解する

 斎藤教授はまず暴力の背景を理解する必要性を訴える。暴力には「家族が刺激している暴力」と「慢性型の暴力」がある。前者は家族が本人の人格を否定したり、怠け者扱いしたりすることへの反発として起こる。「皮肉や嫌みを慢性的に言われ、否定的な言動で苦しめられている当事者は多い。やめれば暴力は収まります」

 一方、慢性型暴力は、家族が特に何もしなくても暴れ出す。本人は「自分の人生は価値がない」など否定的な思いを抱いて他責的になり、親に暴力をぶつけずにはいられなくなってしまう。

 「根源にある感情は『悲しみ』。本人も自分を責めていることを理解してください」

 暴力を収めるためには、本人の言葉に最後まで耳を傾ける必要がある。その上で、暴力には徹底拒否を貫く。我慢したり甘んじて受け入れたりすると暴力を助長しかねない。「暴力は嫌だ」とはっきり伝える。

第三者にSOSを

 次に必要になるのが、問題を外部に「開示」することだ。

 まずは、他人を家に入れる。「家庭内暴力は第三者の目の前では起こらない」。警備会社のサービスやファイナンシャルプランナーの活用なども有効だ。

 それでも身の危険があるときは、覚悟を決め通報や避難を考える。ただ、いきなりではなく、予告しておく。通報は逮捕が目的ではないため、事前に警察に相談しておく。通常は警官が現場に駆けつける頃には暴力は収まっている。

 もう一つの方法が避難だ。短期賃貸マンションなどを確保し、避難したらすぐに「暴力が嫌だから逃げたが、あなたが嫌だからではない」と電話する。その後も毎日電話する。

 暴力が完全に収まるまでは帰らない。1、2週間後を目安に一時帰宅して何度か繰り返す。

 「大事なのは、暴力を振るわなくて済む環境を作ること。本人も暴力を好きでやっているわけではなく、やめる口実が欲しい。そのための『暴力の拒否』なんです」

 斎藤教授は言う。「自分の経験でしかないが、この方法でほとんどの暴力は収まっている実感がある。試してみる価値はあるんじゃないでしょうか」