[PR]

 子連れで電車やバスを利用する際、周囲の冷たさを感じるという親は少なくない。それを象徴するような出来事が今月中旬、東京都内のバスで起きた。

 中野区の20代の女性は17日午後1時過ぎ、2歳の長女とベビーカーに乗せた生後6カ月の次女を連れ、区内で路線バスに乗った。

 左側3列目の1人掛けの席に長女を座らせ、その前に立っていたところ、バスが急発進。ベビーカーは倒れ、長女も壁で頭を打った。ベビーカーは右の前輪が外れ、不安定な状態。2人の泣き声が響き、荷物が散乱した状態のまま、ベビーカーを片手で支えながらひざをつき、前輪を探した。

 前の席に座っていた女性から前輪を渡され、なんとか取り付けたのは、三つ先の停留所に着く頃。10分ほどの間に、運転手が気にかける様子はなく、助けてくれる人もいなかった。「ベビーカー壊れちゃったんだ」「タイヤ外れちゃってる」。乗客たちのつぶやきだけが耳に届き、やるせなさが募った。バスを降りる際、運転手に「なぜ止めてくれなかったのか?」と聞いたが、「お客様はしっかりつかまってくれないと困ります」と言われた。

 帰宅後、バスを運行する関東バスの営業所に問い合わせたところ、その日の夜、管轄営業所の副所長が自宅に来て、謝罪した。同社経営管理室は取材に事実を認め、「再発防止と乗務員の再教育を徹底する」と回答した。

 女性は運転手の対応以上に、周りの反応がつらかったという。「誰も助けてくれなかったことに、寂しさを感じました」と話した。(藤原伸雄)