ククタ=岡田玄
拡大する客に声をかけられるのを待つパオラ・アルバレスさん(奥)とニコラ・ペレスさん=2019年4月15日午後9時47分、ククタ、岡田玄撮影
経済が破綻(はたん)し、政情不安が続く南米ベネズエラの人々が、食べ物も薬も手に入らない深刻な人道危機に見舞われている。幼子を抱えた母親や妊婦は、国境を越えてコロンビアに続々と入っていた。(ククタ=岡田玄)
4月15日午前10時、コロンビア北部ククタのエラスモ・メオス大学病院。産科待合室の妊婦18人のうち15人がベネズエラ人だ。ほとんどが不法に国境を越えて来た。
拡大する大学病院の産科待合室にはベネズエラ人の妊婦たちが大勢集まっていた=2019年4月15日午後0時4分、ククタ、岡田玄撮影
妊娠8カ月のおなかをさするマリアニ・キンテロさん(20)はベネズエラ中西部バレンシア出身。昨年夏に妊娠がわかり、母親と家を出た。「近所では出産で亡くなった人がいた。食べ物も薬もなく、安心して産めるとは思えなかった」
パスポートの入手に700米ドル(7万8千円)が必要と言われた。売り物の肉がほとんどない肉屋で働く夫の収入10年分に当たる。そんな金はなかった。
バスを乗り継ぎ、国境で民兵に2万8千ボリバル(600円)を渡し、抜け道を通らせてもらった。命の宿るおなかを気にしながら山道を慎重に歩いた。「国境の川の水が少なかったのが幸運だった」。コロンビアに入り、すぐ向かったのがこの病院だ。
拡大する出産を待つマリアニ・キンテロさん=2019年4月15日、ククタ、岡田玄撮影
生後1カ月の女の子エメルリスちゃんを抱くマリア・グスマンさん(30)はこの病院で出産後、バレンシアの実家へ家族の看病に戻り、また不法入国したばかり。実家は停電が続き、水もガスも使えない。周囲の家からは、まきを燃やす煙が立ち上っていた。
エメルリスちゃんが生まれた3月12日はベネズエラで最初の大規模停電が起きたころだ。「ベネズエラにいたら無事に産めたとは思えない。この子のために国を出ることを選んだ」と言って、抱きしめた。
拡大する国境の川を渡ってコロンビアに入るベネズエラ人ら=ククタ、岡田玄撮影
この病院で出産する女性の6割以上がベネズエラ人だ。
妊婦だけではない。医療を求める人々が後を絶たない。ジェニフェル・ゲレーロ救急部長によると、救急病棟の定員は75人だが、1日140~160人の急患を診ており、やはり多くがベネズエラ人だ。
フアン・ラミレス院長は「人口…
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朝日新聞国際報道部