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 茨城大会開幕が近づいた6月下旬。2017、18年と2連覇した土浦日大(土浦市)では午後8時半ごろ、夕飯を終えた部員が室内練習場に姿を現す。部員同士でゴロを転がしての守備練習や打撃、素振りなど、それぞれ別の練習をこなす。試験勉強に励む部員もいる。

 守備練習した鶴見恵大君(3年)は「この時期は実戦練習が多くなるので、体の正面で捕球する基本の動きを確認したくて」。ティーバッティングをした石渡耀(ひかる)主将(3年)は「見つかった課題を埋める大切な時間」と汗をぬぐった。

 「高校野球の全体練習って長すぎると思うんです」。16年に就任し、2年連続の甲子園に導いた小菅勲監督(52)は言う。

 平日の練習開始は午後5時で全体練習は2時間半ほど。部員ほとんどが寮生活を送るので全体練習を長くもできるが、自主練のための時間と体力を残す。「言われたことをやるだけではうまくならない。自分で考えてやるのが本当の練習」

 全体練習は守備の連携や走塁、サインプレーなど戦術の確認が中心だ。自主練はするかしないかも含めて選手が決める。基礎トレーニング中心の冬場は、全体練習のメニューも選手たち自身に決めさせる。

 原点は現役時代の「のびのび野球」にある。小菅監督は、取手二高が1984年に全国制覇した時の三塁手。練習時間は当時としては短い3~4時間で、帰宅する時、近くの高校はまだ練習していた。

 自主性重視の方針は昨夏、常総学院との茨城大会決勝で効果を見せた。五回まではノーサイン。1点を追う四回1死満塁、9番の石渡君は強攻策で適時打を放ち、その後一挙6得点し試合を決めた。「サインを出していたら、100%スクイズ。それでは同点どまりだったかも知れない」

 六回以降はサインを出したが、追加点は奪えなかった。「監督の思い通りにならないのが野球。練習から選手に主体的に考えさせてきたから、想像以上の爆発力が発揮できた」

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 日本高校野球連盟と朝日新聞社が18年春に行った調査で、平日の練習時間(朝練・個人練習含む)を「3時間未満」とした県内の高校は32・4%(全国平均50・4%)。5年前の21・9%から10ポイント以上増えたが全国とは差があった。一番多いのは3~4時間で55・2%(全国平均37・9%)。

 県教育委員会は昨年5月、公立中高の運動部について朝練は原則禁止とし、平日の活動時間を2時間程度とするなどの方針を定めた。全国的に練習時間を短くする流れが続いている。

 高校野球の練習はどう変わってきたのか。北海道の高校で監督経験があり、今は筑波大硬式野球部で監督を務める川村卓(たかし)准教授(野球コーチング論)は、「投げ込み」「打ち込み」など「込み」がついた練習が多い野球は「反復練習で時間をかければかけるほど上達するという考え方が強く、今も残っている」と話す。

 1982年に「やまびこ打線」の池田高(徳島県)が全国制覇し、同校が重視した筋力トレーニングでスポーツ科学の知見が注目され始め、その頃から「効率的に鍛える」という視点が出てきたという。

 練習に使うマシンが低コストになったことや、重い球を使う投球練習のように体力と技術を同時に鍛える練習法が考え出されたことなどで、練習時間の短縮は徐々に進んだ。ここ10年ほど、指導者が勉強会を開いて効率的な練習法を共有する場が増えているという。

 川村准教授は「練習メニューを選手に考えさせることで無駄に気づき、効率化が進む」と話す。令和の時代、種々のデータを簡単に数値化できるようになることでも、効率化しやすい環境が整っていくという。

 一方で「効率化のみ推し進めると個人に特化した練習が増え、時間がかかる戦術練習が削られることになりかねない」と指摘する。「個の力が上回る相手にチーム一体となった戦術で立ち向かうのも高校野球の良さ。それを教え続けていくことも、これからの指導者に求められている」(佐々木凌)