[PR]

 コーポレート・ガバナンス(企業統治)の意識を高めようと、経団連が本腰を入れている。これまでは、社外取締役の導入策など反対することが多かったが、機関投資家の国際団体と提携するなど株主との対話を進め、日本型ガバナンスのあり方を模索し始めた。

 「これからは企業の主体的な取り組みを促進したい」。経団連が21日に開いたシンポジウム「実効あるコーポレート・ガバナンスの実現に向けて」で、経団連の井上隆常務理事が開催理由をこう説明し、意識の向上を呼びかけた。

 シンポでは、経団連がこの日に提携の覚書を結んだ企業統治の国際組織インターナショナル・コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のケリー・ワリングCEO(最高経営責任者)もあいさつした。「高い基準での企業統治について、日本企業トップとの対話が進むことを期待したい」

 討論では、二つの価値観がぶつかった。

 パネリストの一人で、30年近く日本の企業統治を見てきたゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井さんは「ステークホルダー(利害関係者)資本主義から、株主資本主義へやっと移行してきた」。従業員や取引先などを重視する経営から、株主を中心に据えた形になってきたという。

 これに対し、建機大手コマツの大橋徹二会長は「メーカーにとっての企業価値とは、ステークホルダーからの信頼度の総和だ。お客様、代理店、従業員、投資家、地域社会……」とし、ステーホルダーに強いこだわりをみせた。花王の沢田道隆社長も、長期間にわたり新素材などの研究開発に取り組めるガバナンスが必要だと指摘した。

 司会役の三井住友フィナンシャルグループの国部毅会長は、国によっても求められる企業統治が違うことを指摘。「単に欧米をまねるだけではいけない。企業ごとに異なるのも当たり前。日本の良さを生かしながら、自分の会社にあった体制を追求してほしい」とまとめた。

 このテーマでのシンポは2回目。経団連では、昨春に会長になった中西宏明・日立製作所会長の意向もあって企業統治に積極的になった。昨秋の会合では、中西会長が「日立の社外取締役は、以前は経営者の友人だった」と形式的な統治から抜け出すべきだと訴えた。

 経団連は今年4月にも、国部氏を団長とする使節団を米国に派遣。機関投資家から、この数年の日本の取り組みが評価された半面、「政策保有株式の削減などが指摘された」(国部氏)。こうした見方には、歴史の長い企業が多く、地域社会も重視する従来の日本企業の姿を説明してきたという。今後、海外の投資家が納得できるような日本型ガバナンスを、どう築いていけるかが焦点となりそうだ。(加藤裕則)