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 グラウンドの黒土を踏みしめるたび、旗竿(はたざお)を握る力が強くなった。「こんなに屈辱的なんだ」。大阪桐蔭の中野波来(はる)主将(3年)は、紫紺の大優勝旗を手に歯を食いしばって歩いた。

 3月23日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)であった選抜大会の開会式。大阪桐蔭は大会3連覇を目指したが、昨秋の近畿大会で8強どまり。選抜出場を逃し、チーム全員で優勝旗を返しにくることはできなかった。

 中野君とともに優勝杯を返しにきたのは副主将の宮本涼太君(3年)。開会式を終え、2人にしばらく会話はなかった。帰り道、宮本君がおもむろに声を出した。

 「悔しいな」。中野君は「夏は絶対、全員で戻ってこよう」。

 大阪桐蔭は1991年春に初めて甲子園に出場してから、昨年までに春夏あわせて大優勝旗を8度、手にしてきた。中でも中野君たちの1学年上は、史上初の2度目の春夏連覇を果たした。「最強世代」と呼ばれ、4人の選手が同時にプロの世界に入った。

 「有言実行した先輩方を尊敬している」と中野君。常に勝利の重圧を感じながらも結果を残し続けた先輩たちの偉大さを、最上級生となって一層感じるようになった。

 「最強世代」と比べ、力が劣ると自覚している。昨年の春夏連覇でベンチ入りした下級生は、中野君と宮本君しかいない。周囲には勝ち続ける大阪桐蔭のイメージが定着した。そんな中で、中野君は「先輩たちと比べられるプレッシャーはあった」という。

 中野君たちは、「悔しさと意地」をテーマに練習を重ねてきた。寮生活ではあるものの、練習量をやみくもに増やすことはできない。最強世代に追いつくためには何をすればいいか。指導者に言われて練習するのではなく、自ら考えて練習する雰囲気づくりを心がけた。秋と春の敗戦を忘れないためにも、ミーティングでは中野君か宮本君のどちらかが必ず「悔しさと意地」という言葉を口にしてきた。

 夏の大会に向けて大阪桐蔭は各地へ遠征に出て、最終調整に余念がない。6月22日には広島県三次市での招待試合に臨んだ。選抜に出場した広陵には負けたものの、春の広島県大会を制した広島商に競り勝った。西谷浩一監督(49)は「夏を最後まで勝ちきるために、まだいろいろ試している。今のチームの全員で深紅の大優勝旗を返し、持ち帰ってもらいたい」と期待する。そして、「どこまで成長しているか、まだわからない部分もある」と付け加えた。

 大阪桐蔭にとって、秋以降の大会で優勝経験がないチームは2013年以来6年ぶりだ。その年のチームは大阪大会を制し、甲子園出場を果たしている。中野君は言う。「僕たちも『大阪桐蔭』だ。その看板に恥じないよう、頂点をめざす」(山田健悟)