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 前橋市のベイシア文化ホールに6月14日、丸刈り頭の高校生が集まった。夏の高校野球群馬大会の組み合わせ抽選会に臨む出場62チームの主将たちだった。気合を入れるためか、地肌が見えるほど刈った選手もいる。朝日新聞の集計では、62人のうち丸刈りではないのは6人だけだった。

 昨年の第100回記念大会を前に日本高校野球連盟と朝日新聞が行った調査でも、全国の加盟校の4分の3以上が部員の髪形を丸刈りと決めていると回答。高校野球における丸刈りの定着を物語る。

 なぜ丸刈りなのか。群馬大会の出場各校の監督にアンケートで尋ねた。「汗をかき、帽子をかぶるので楽」「チームが同じ目標に向かっていく姿勢の表れ」「慣習」「高校球児らしくさわやか」「高校野球の一つの文化」……。機能性から精神的な効用、文化論まで答えは多様だった。

 「高校野球らしさとして丸刈りを求める風潮がある。弱いチームがその風潮を変えることに抵抗がある」という意見もあった。そんな中、春夏通じて8度の甲子園出場経験のある東農大二がこの春、部員の髪形を自由化した。

 主将の小野沢光洋君(3年)は「髪形を自由にしたのはあくまで手段。狙いは主体性を高めるところにある」と説明する。小野沢君も丸刈りをやめ、今は両サイドを短く刈り、前髪は少し長めにして横に流す。

 群馬の私学勢をリードする存在だった東農大二は10年前の夏を最後に甲子園から遠ざかっている。その後は前橋育英と健大高崎の2強の壁が大きく立ちはだかる。新チームをまとめることになった小野沢君は「他のチームと同じことをやっているだけでは勝てない」と考えた。髪形の自由化に限らず、試合中のミーティングも選手だけで集まって作戦を立てるなど、選手自身が考え、行動するチームをめざしている。

 野球部にはこれまでも髪形について明確なルールはなかったが、丸刈りは「暗黙の了解」だったという。小野沢君は「『今までもそうしていたから』ではよくない。物事に考えて取り組むきっかけになる」と髪形の自由化を仲間や坂上泰生監督(33)に提案した。

 丸刈りイメージが先行し、野球を敬遠する子どもたちが多いと感じていたのも自由化の背景にあった。坂上監督は「高校野球の将来を考える上でも、思考停止にならないことには意味がある」と賛同した。

 事前に部員に尋ねると、8割が賛成。整髪料の使用禁止など、校則に沿ってルールも決めた。部員は100人以上いるが、髪形の自由化による混乱や問題は起きていないという。

 気に入ってあえて丸刈りを選択している部員もいるが、多くはそれぞれに好きなヘアスタイルで練習に取り組む。「見られている意識もあり、自覚も生まれている」と小野沢君。坂上監督は「試合でいい結果も残して、これまでの取り組みの成果を示したい」。(森岡航平)