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 「ばっちこーい」

 6月初め、ある晴れた日。ノックが始まると、球児たちはそろって元気な声を出し始めた。白球を追う姿は、どこのグラウンドでもよく見る風景。だが、着ている練習着はデザインや色がばらばら。帽子もだ。

 人口約5600人の佐賀県玄海町で、波穏やかな仮屋湾を望む場所にある唐津青翔は、実は部員不足で夏の大会出場も危ぶまれた。他の部活を引退した生徒らを勧誘し、何とか試合に出場できる9人以上に。ユニホームや練習着の注文が間に合わず、お下がりや、バスケ部の服を着て練習に励んでいた。大家靖弘監督(29)は「部員がやる気をなくして練習に来ないこともあった。壁当てや素振りばかりだと、面白くないですよね」と話す。

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 決して部員不足に悩まされる高校ばかりではない。佐賀県高校野球連盟(高野連)によると、5月時点で部員が50人以上いるのは、甲子園に出場したことがある高校や、都市部の高校を中心に10校にのぼる。

 ただ、全体でいえば、県内の高校球児は減少傾向だ。2009年度は1789人いたのが、18年度には1641人に減った。1997年に認められた連合チームは、今年は過去最多の4チームになった。

 これには色々な背景が考えられる。県教育委員会の調査では、90年度には4万252人いた県内の高校生は、18年度は2万4527人まで減少した。少子化は確実に進んでいる。

 価値観も多様化した。プロの世界で93年にサッカー・Jリーグが華々しく開幕。近年はバスケのBリーグ、卓球のTリーグも始まった。サガン鳥栖がある県内ではサッカー人気が目立ち、サッカー部員は一昨年度、野球部員を上回り、昨年度はさらに差が開いた。

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 「野球は『特別なスポーツ』という意識が関係者の中にあった」と話すのは、県中学校体育連盟の元軟式野球専門部長で、現在は北陵の教頭を務める中野義文さん(60)。昔から人気があったが、積極的な普及活動をしてこなかったことが「野球離れ」につながったと指摘する。

 また、野球はグラブやバットなど、そろえなければならない用具が多くてお金がかかるため、保護者が敬遠する面があるという。

 中野さんは「野球関係者は危機感を持ち、野球に少しでも触れてもらえるような環境づくりに励むべきだ」と訴える。(松岡大将)