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 イラン核合意の参加国、英独仏中ロ・欧州連合(EU)とイランの代表が28日、ウィーンで次官・局長級の会合を開き、米国の合意離脱と対イラン制裁の再発動で緊張が高まる中、対応を協議した。英独仏は、イランを経済的に支援する「貿易取引支援機関(INSTEX)」の稼働を始めたと伝えた。イランを核合意にとどめる切り札にしたいが、その力は未知数だ。

 EUは会合終了後、各国が核合意の重要性を確認したとする声明を発表。INSTEXを通じた最初の取引が行われているとした。7月に外相級会合が開かれる見通しで、イランへの働きかけが活発化しそうだ。

 イランは、核開発を大幅に制限する核合意の維持には、米国の制裁再発動で失った経済的見返りの確保が不可欠だと主張してきた。イラン産原油の全面禁輸などで経済が大きな打撃を受けており、状況が改善できなければ、核開発の制限履行を部分的に停止すると宣言している。

 INSTEXの稼働は、欧州側がイランの要求に対して一定の対応をしたことになる。イランのアラグチ外務次官は会合終了後、記者団に「これまでの会合と比べ、一歩前進と言える」と発言し、評価した。

 ただ、履行の部分停止の拡大を止めるのに「十分とは言えない」とし、「判断するのはテヘラン(政府)だ」と語った。INSTEXの稼働以外は「我々の期待を下回っている」とも述べ、石油取引を早期に再開できない不満をあらわにした。

 INSTEXは英独仏が今年1月に設立。イランと貿易する欧州の中小企業を守ることを主眼に、間接的な金融取引で制裁を回避する仕組みだ。イランで不足する医薬品や食料の供給に貢献するとみられ、他のEU加盟国や第三国の利用も想定する。イラン側は、小規模な取引を軌道に乗せた後、石油関連の取引の受け皿とする希望がある。

 一方、米国はINSTEXに不快感を示してきた。イラン政策特別代表のフック氏は「企業にニーズはない。米国とイランのどちらとビジネスをするかを選ぶとしたら、米国を選ぶからだ」と発言している。米国が不適切な取引だと認定して制裁の包囲網をさらに強める可能性もあり、欧州側は規模の拡大には慎重にならざるを得ない。(ウィーン=吉武祐)