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 宇都宮商3年の花塚星来(せら)さんのユニホームに背番号はない。

 マネジャーとして野球部に入部した。公立中の野球部では補欠。ビジネス資格の取得を考えて選んだ高校だった。

 創部99年の宇都宮商は春夏4回の甲子園出場を誇る強豪校。それでも野球は続けたかった。中学で初ヒットを打った日のうれしさははっきり覚えている。ただ専攻したコースでは野球部との両立が難しかった。

 「野球に関わることは色々な形でできるはずだよ」。苦渋する息子を見かねて母の由美子さん(48)が声をかけた。悩んだ末、マネジャーとして入部する異例の形となった。「始めたのなら最後まで頑張って」。両親も背中を押してくれた。

 気持ちに折り合いを付けたつもりだった。それでも1年の夏がすぎ、新チームで同級生が次々にベンチ入りした。グラウンドで懸命にプレーする姿を無意識に目で追っていた。

 「一緒に野球がやりたいなあ」。そんな気持ちが何度も浮かんだ。そのたびに「覚悟の上でマネジャーとして入ったんだ」と気持ちを奥底に押し込めた。

 毎朝6時半に登校し、選手の自主練習に付き合ってきた。放課後は選手がウォーミングアップをしている間にグラウンドを整備していく。練習が始まれば、打撃投手をつとめ、ノックバットを振り続ける。懸命に自分のノックに飛びつく選手の姿に、気持ちは引き締まった。

 主砲の阿部真希選手(3年)は毎朝、花塚さんを相手に練習してきた。夜の自主練習も一緒だった。誘っても嫌な顔をされた記憶はない。面と向かって口にするのは恥ずかしいが、「ここまで来たのは花塚のおかげ。彼のためにも夏は勝ちたい」。

 3月の誕生日。部員一同からグラブとバットを贈られた。バットには「花塚星来」の文字。サプライズに思わず涙がこぼれた。「よい仲間に会えて本当によかった」。次の日から練習で使ってきた。毎日、家に持ち帰って手入れも怠らない。「グローブとバットは使ってなんぼだから」

 1年生マネジャーの砂田愛月(あいる)さんは、春から花塚さんの動きをずっと追ってきた。選手一人ひとりに気を配る姿はお手本だ。不思議と花塚さんが加わると、選手がリラックスして盛り上がる。今は一つひとつ見習おうと必死になっている。

 「弱音もはかず愚痴一つこぼさなかった。夏はスタンドから星来と一緒に精いっぱい応援したい」と由美子さん。

 悩み苦しみながら、花塚さんは自分の役割を果たしてきた。「支え、支えられてここまで来られた。誰かが間違えても、誰かがカバーすればいいのが野球。仲間と支え合って人間として成長できた」

 15日、宇都宮商は宇都宮白楊と初戦を戦う。