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スポーツのミカタ

「しっかりと腕を振ろう。まずは、自分の強い球を投げる。その後に制球力とかレベルアップをしていけばいい」

 女子プロ野球・愛知ディオーネの里綾実が今春、チームの投手陣にかけた言葉だ。ワールドカップ(W杯)で3大会連続で最優秀選手(MVP)に輝いている右腕は、所属先で今年から投手コーチも兼任している。

 「こうなりたい」。そう感じたことを、実現させてきた。

 日本がW杯で初優勝した2008年の第3回大会は、松山市・坊っちゃんスタジアムの観客席で決勝を見ていた。「高校を卒業した後に受けた代表のトライアウトは最終選考で落ちていた。日本の優勝はうれしい半面、悔しさもあった。次は、あそこにいたいと強く思った」

 2年ごとにあるW杯に初出場した10年は優勝メンバーになり、12年の大会後は新たな目標をたてた。「決勝で投げた投手がMVPだった。次は自分がそうなるように頑張ろうと思った」。14年につかんだ大会MVPの座を、その後は手放していない。

 最速126キロの直球や制球力のある鋭い変化球が武器だが、高校時代はイップスに苦しんだ経験もある。1年冬にフォームを改良しようとして自分の投球リズムを失った。「ストライクを投げないと、という思いが強すぎたのか自分の投げ方が分からなくなった。投げたら暴投。捕手に申し訳ないという気持ちがより悪循環になって……」

 投げられないときは三塁を守った。「動きながらだと投げられた。マウンドでは、サードにいる感覚で投げた」と、徐々に克服していった。

 女子プロ野球は今年が創立10年目になる。ディオーネの本拠は17年まで兵庫で、昨年から愛知に移転。3チームが各42試合のリーグ戦を行った昨年は愛知が最終的に年間女王決定戦に勝ち、頂点に立った。今年は新たな取り組みとして春、夏、秋と三つのリーグ戦を実施。各リーグ戦の試合を同じ地域で行っており、現在の夏季リーグは東海地方で開かれている。

 チームが愛知に移って2年目。里は「県民性的に野球への目が肥えているというか、熱い。京都で試合があるときも愛知から来てくださる。そういう期待に応えられたら」と話す。

 「女の子だって甲子園!」をキャッチフレーズに女子野球を描いた漫画「花鈴(かりん)のマウンド」で主人公が実名を挙げて憧れる存在でもある。「東海地方でも選手が増えている。女子野球を盛り上げるきっかけに、女子プロ野球がなっていければいいなと思う」(上山浩也)

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 〈さと・あやみ〉 1989年12月生まれ、鹿児島県奄美市出身。小学3年生で野球を始め、鹿児島・神村学園高、尚美学園大で女子硬式野球部。2013年からプロへ。身長166センチ、右投げ右打ち。

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 〈花鈴のマウンド〉 主人公の桐谷花鈴ら野球に取り組む高校女子部員を描いたストーリー。女子プロ野球リーグを観戦に訪れた際には、里綾実投手ら実在の選手たちも登場する。7月6日にコミックの最新巻(第7巻)が発売された。