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 第3ラウンドの1分を過ぎたときだった。アヌチャー・タサコ君は対戦相手からアッパーを食らってぐらつき、後ずさりした。ロープ際でさらに数発のパンチを浴び、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。レフェリーの呼びかけに応じず、意識を失ったまま、搬送先の病院で亡くなった。13歳だった。

 「体調も万全、練習も順調。運が悪かったとしか言えない」。アヌチャー君の伯父でトレーナーでもあったダムロンさん(49)は首を振る。バンコク郊外での、あの昨年11月の試合から月日が過ぎても、アヌチャー君がふらりと練習場に現れるような気がしている。

 アヌチャー君がタイ式キックボクシング「ムエタイ」を始めたのは5歳の頃。ダムロンさんのジムで初めてグローブをつけた。「動きがいい」。ほめられるとうれしそうな表情を浮かべ、すぐにのめり込んだ。

 幼くして両親が離婚。母は韓国へ出稼ぎに。タイ東北部カラシン県の小さな村で兄、祖父母と暮らした。「優しくて真面目。叱った覚えはない」と祖母のスビンさん(76)は言う。朝4時に起きて1時間ランニング。戻ると家族の朝食を用意。学校から帰ると手作りの道具でトレーニングをした。

 暮らしは貧しかった。祖父母の…

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