[PR]

 見た目では分かりにくい発達障害について、周囲の理解を深めたい。そのための取り組みに、サッカーJリーグのクラブが一役買った。27日にあった川崎フロンターレと大分トリニータの試合会場が、啓発活動の舞台になった。

 川崎の本拠・等々力競技場(川崎市中原区)。川崎、大分両市から招かれた発達障害の子どもたち20人が歓声をあげた。「やったー、ゴール」「いいぞ、いけー」「やばい、やばい負ける」。ハーフタイムには川崎の選手やマスコットとも触れあった。

 発達障害には、音や光に過敏に反応したり、人混みを苦手としたりする症状もある。そんな人でも観戦できるよう、普段はスポンサー用に使う、遮音効果のあるガラス張りの部屋をこの日、子供たちが気持ちを落ち着かせられる「センサリールーム」に衣替え。照明を落とし、室内にソファや囲われた空間を用意して居場所を選べるようにした。

 大分市から訪れた特別支援学校に通う谷脇颯一くん(11)は初めてのサッカー観戦に大喜び。ガラスに顔を近づけて、地元クラブを応援した。「楽しいし、面白い」。母の智恵子さん(41)は「子どもがこんなにノリノリになるとは思わなかった。人が多いところでは落ち着きがなく、今まで観戦に連れて行けなかった。温かく見守ってくれるとありがたい」と語った。

 東京五輪・パラリンピックを機に、障害のある人と共生できる社会を実現させようという事業の一環。川崎市などが、社会貢献活動に積極的な川崎フロンターレに声をかけて実現した。発達障害の子どもに観戦の機会を提供するだけでなく、社会の理解が進んでほしいとの願いがある。

 試合会場そばの屋台が立ち並ぶ一角には特別ブースが設けられ、発達障害の事例を紹介する映像が流された。その中には、J1の最優秀選手に選ばれたことがある川崎の中村憲剛選手(38)も登場し、障害への理解を呼びかけた。中村選手は言う。「アスリートには、人の目を向けさせる力があると思う。それを使わない手はない。誰か1人の心に響くだけでも、やる価値があると思う」

 今回のイベントの立案者の1人である橋口亜希子さん(47)は、2018年9月まで日本発達障害ネットワークの事務局長を務めた。自身も発達障害の息子を持ち、約20年前から啓発活動を続けている。

 橋口さんによると、発達障害のある子もその親も、1番怖いのは周囲からの冷たい視線だという。「人間なら誰もが持つ特性が強く現れることで起きる障害だからこそ、知れば一瞬で理解できるし、特別視しなくなる」と橋口さん。プロスポーツの会場での啓発活動について「私たちだけだと話を聞いてもらうのに5年、10年かかるものが、一瞬で何万人にも届く」と大きな期待を寄せる。(清水寿之、吉田純哉)