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 6月28日、宮城県の名取市文化会館中ホール。巨大なトーナメント表を前に、67チームの主将たちが次々と組み合わせのくじを引く中、スカート姿の女子生徒が壇上に上がった。

 「鹿島台商・石巻北連合高校。65番です」

 鹿島台商・石巻北連合の主将、山田知希さん(3年)は、県内唯一の女子主将だ。堂々とした声が、客席の奥まで届く。うっかりチーム名に「高校」をつけてしまったのは、大勢の男子主将に囲まれてちょっと緊張したから。それでも「しっかり声が出せた。元気では男子に負けない」と胸を張った。

 鹿島台商に入学するまでは、柔道や吹奏楽に打ち込んでいた。仲間の力になるのが好きで、小学生で応援団長を務めたこともある。野球は何人でプレーするかも知らなかったが、「きらきら目を輝かせた」先輩たちに誘われ、マネジャーとして入部した。

 選手になろうと考え始めたのは1年の秋だ。鹿島台商が連合チームを組んだ涌谷の監督が、県内初の女性監督、阿部奈央さん(現部長)だった。男子部員にノックを打つ姿を見て「かっこいいなあ」と憧れた。昨夏には、古川黎明で1学年下の女子野球部員がプレーしているのを知った。「私にもできるかな」。2年の秋、選手への転向を決意した。

 柔道や吹奏楽で鍛え、体力には自信があるはずだった。だが、ボールを投げても塁間の半分も届かない。練習メニューは男子部員と同じで、ウェートトレーニングでは20キロ近いおもりを持ったスクワットもあった。ただ、男女の違い以上に、ノックや打撃練習では経験の差を思い知らされた。「厳しいけど、それだけ期待されているんだ」。家では毎日の素振りを欠かさず、練習では持ち前の元気で仲間に「ナイスプレー」と声を出し続けた。

 野球に正面から取り組む姿に、阿部欽哉監督は「一番声が出ている。練習も誰より熱心だ」と評価した。今春、連合チーム結成を機に、山田さんを主将に指名した。それまで主将とエースを兼ねていた大内優斗君(3年)の負担を減らす狙いもあった。

 試合に出ない私が、主将をやっていいのかな。でも、今までやってきたことが認められたんだ――。

 高野連の規定で、女子部員は公式戦に出られない。出たい気持ちはあるけれど、悔しいとは思わない。公式戦出場をめざすなら、最初から違う部活に入っていたから。その分、主将として、自分のできることでチームの勝利につなげようと決めた。

 梅雨空の下、山に囲まれた鹿島台商のグラウンド。男子部員と一緒のノックで二塁手の守備位置に打球が飛ぶ。グラブで球をはじくと、「しっかりしろ」と監督の鋭い声が響く。「もう一度!」と、ひときわ大きな声で答える。白いユニホームはいつも泥だらけだ。投げ返すボールには勢いが出て、50メートル近く投げられるようになった。自分のプレーの合間には、「サードいいよっ」「ナイスキャッチ」と、仲間への声かけも忘れない。春の練習試合では代打で出場し、3打席目で初めてバットに当ててファウルを打てた。いつかヒットを打つのが目標だ。

 宮城大会では、ユニホームを着てノックを補助し、試合中は記録員としてベンチに入る。「ベンチからセンターまで届く声でグラウンドの選手を支えたい」。12人の選手を率いる主将として、「全員野球」で初戦突破をめざしている。(申知仁)