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 「103、2531!」「115、2035!」

 岐阜高校のグラウンドには、時折、暗号のような数値が飛び交う。声の主は、北川英治監督(48)。スマホとメガホンを手に、投手が1球投げるたび、大きな声で数値を読み上げる。

 数値は、球速と球の回転数だ。センサーが内蔵されているスポーツ用品メーカーSSKの硬式ボール「テクニカルピッチ」を投げると、内蔵センサーが球種や球速、回転数などを記録する。昨秋の県大会後、このボールを採用した。

 投手の徳永瑛介君(3年)には苦い経験がある。昨秋の県大会準々決勝の県岐阜商戦。同点に追いついた直後の七回裏、甘く入った球をとらえられ、適時打を許した。そのまま惜敗。「もっと球速を上げたい」。冬の課題だと思った。

 だが、北川監督の狙いは違った。投手陣の平均球速は110キロ台。他校と張り合うため、回転数を上げて球速より速く感じる直球と、落差のある変化球に活路を見いだす。

 テクニカルピッチは、投球データをスマホアプリで閲覧でき、1球1球、その場で分析が可能だ。なぜ球速が上がったのか、なぜ変化球が曲がらなかったのか。データは選手のスマホにも共有される。

 アプリ画面には、シュート率やスライド率も表示され、投球は全て数値化される。「数値が出たことで自分にうそをつけなくなった」と北川監督。「感覚で練習するのではなく、数値を根拠に、能力を最大限に引き出そう」。そう呼びかける。

 「これまではスピードばかり重視してきた」と話す徳永君。テクニカルピッチの導入で、回転が利いた球なら打者を打ち取れることが分かってきた。「自分の球がデータ化されることで、得意、不得意も分かる。得意な部分には力を入れて取り組みたい」

 対戦校のデータ管理にスマホアプリを活用する学校もある。美濃加茂高校でデータ班のリーダーを務める薄田瞬聖君(3年)は、春の県大会、スマホを握りしめ、試合展開を記録した。スマホに入力したのは、次に対戦するチームのスコアだ。「紙だけじゃ表せない詳細なデータが、チームの役に立てば」と話す。

 薄田君が使用しているのは、「Easy Score」というスコア入力アプリ。相手投手の配球や打者の打球方向・位置、走塁、進塁の詳細な情報が記録できる。紙のスコアブックよりも細かく入力でき、情報量が多い。

 アプリでは、入力したデータを即時に共有できる。これまでは、データ班の帰りを待ち、手書きの紙を手元に置いてようやく始められたミーティング。だが、今は次の対戦校の試合が終わると同時に作戦を練ることができ、有効に時間を使えるようになった。

 一度入力を間違え、修正に手間取ると、混乱する場合もあり、一本化は今後の課題。現在はデータ班の4人が偵察時に、アプリと紙を並行して使用している。

 あらゆるものが数値化され、技術の発展によりデジタル化が進む。それは高校野球も例外ではない。だが、球児たちの努力や熱い思いは、数字だけでははかれない。高橋陽一監督(34)は、自分に言い聞かせるように話した。

 「数字はあくまで一側面。うまく付き合いながら、何よりも選手と野球を楽しみたい」