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 4日公示された参院選は、消費増税や憲法改正の是非をめぐり、与野党の主張が激突する構図となった。金融庁の審議会報告書が提起した「老後不安問題」も、大きな争点となりそうだ。安倍政権の外交姿勢や、経済の足かせとなっている人手不足問題への対応も問われる。

消費税

 自民、公明両党は、今年10月に予定通り消費税率を10%へ引き上げることを掲げる。過去に2度、増税を延期した安倍晋三首相だが、今回は堅調な景気状況を挙げ、「引き上げさせていただきたい」との立場だ。

 首相は2017年9月、国の借金返済に使う予定だった増収分の一部を教育無償化に充てると表明。増税への環境を整えた。今年度予算では増税による景気の落ち込みを防ぐため、増収分を上回る2兆円規模の対策を盛り込み、公明が強く主張した軽減税率も導入する。

 一方の野党各党は、10月の増税にこぞって反対する。アベノミクスの恩恵は大企業に偏り、個人の所得増につながっていないとの主張が目立つ。日銀や内閣府の公表する景気の指標が悪化していることも理由に挙げる。立憲民主党の枝野幸男代表は「消費税を上げれば経済に致命的な打撃を与えかねない」と訴える。(岡村夏樹)

憲法

 自民党は、憲法改正の実現を公約の重点項目に掲げる。9条への自衛隊明記を含む「改憲4項目」を列挙。安倍晋三首相は3日の党首討論会で「自衛隊の存在を明確に位置づける。これは防衛の根本だ」と強調した。

 立憲民主党など主要野党は自衛隊明記案に反対を表明。立憲や国民民主党は、首相による衆院解散権の制約など、国民の権利拡大につながる議論を求める。

 首相は、国会での憲法論議前進を訴え、争点化する構えだが、野党は「憲法を守れない首相のもとで議論はできない」(共産党)と批判を強める。公明党も首相の改憲論とは距離があり、山口那津男代表は3日の党首討論会で「憲法(改正)が直接、いまの政権の行いに必要なわけではない。冷静な現実認識を持って議論を深める努力が必要」と指摘した。

 日本維新の会は教育無償化や統治機構改革、憲法裁判所設置を提案する。(大久保貴裕)

年金・老後不安

 年金だけでは生活費が不足するとした金融庁審議会の報告書を機に、老後不安への対応が争点に浮上した。

 自民、公明両党は、現役世代の減少などに応じて年金水準を引き下げる「マクロ経済スライド」を組み込んだ、今の公的年金制度の持続可能性を主張。低年金者に最大で月5千円を支給する「年金生活者支援給付金」が、10月に始まることもアピールする。就労など自助努力も促すため、働く高齢者の厚生年金を減らす在職老齢年金制度を見直す。

 野党は、自公の対応では「不安は解消されない」と批判。マクロ経済スライドの廃止や、低年金者への給付強化、最低保障年金の創設などを訴える。立憲民主党や国民民主党は、医療や介護などの自己負担の総額に、所得に応じた上限を設ける「総合合算制度」の導入も提案するが、財源などが課題となる。(山本恭介)

外交・安全保障

 自民党は外交を公約の前面に押し出し、長期政権の強みをアピールする。「日米同盟をより一層強固にする」と強調。公明党も足並みをそろえる。

 野党が与党との対立軸として強く打ち出すのは、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画だ。自民党は辺野古移設を「着実に推進」としているのに対し、主要野党は辺野古埋め立て工事の中止で足並みをそろえる。維新は「普天間基地の負担軽減と日米地位協定の見直し」を掲げる。

 安全保障では、自民党は安保法に関連した態勢構築や能力向上に加え、宇宙・サイバー・電磁波などの新領域での自衛隊の体制の強化を挙げる。これに対し、立憲・共産・社民・れいわは安保法の廃止で一致。国民は「効率的で効果的な防衛力を維持・整備」、維新は「集団的自衛権行使の要件を厳格化」を掲げる。(小野甲太郎)

雇用・人手不足

 自民、公明両党は、アベノミクスの実績として雇用の改善を強調し、安倍首相は有効求人倍率が全都道府県で1倍を超えたことや、企業が賃上げに動いていることを成果に挙げる。深刻な人手不足に対しては、女性や高齢者の就労を後押しするとともに、外国人労働者の受け入れを広げた。

 首相は働き手がこの6年で約380万人増えたことも強調する。ただ、その半数以上は非正規で働く人が占める。働き手に占める非正規の割合は4割近くと過去最高水準にあり、賃金の格差が拡大している。

 野党はこうした賃金格差や貧困問題の解消を掲げる。立憲民主党は「非正規雇用が固定化している」(枝野代表)と批判。官民の非正規雇用をできる限り正規雇用化すると訴える。国民民主党は、新たに正社員を雇った中小企業に社会保険料の企業負担分の半分を助成すると主張。共産党は製造業派遣や日雇い派遣の全面的な禁止などを掲げる。(内山修)