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 6月下旬に開催された陸上の日本選手権で、男子100メートル、200メートルで2冠を達成したサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)。実力を証明して世界選手権の代表の座を手にすると、2週間の滞在を終えて4日夜に留学先の米国・フロリダへ戻った。1年半ぶりの日本を「満喫した」と無邪気に笑う20歳だが、その走りはライバルたちに大きな衝撃を与えた。

 同じ9秒台の記録を持つ桐生祥秀(日本生命)との直接対決は、日本新記録こそ出なかったが、100メートル、200メートルともにサニブラウンが圧倒した。レース後に握手を交わした2人。力の差を見せつけられた桐生は、悔しさを押し殺して完敗を認めた。「後半の爆発力は(サニブラウンが)いまの日本で一番。勝ちたかったけど、差はまだある」。成長著しい小池祐貴(住友電工)も「悪条件の中でもタイムを出せるのはさすが。すごい選手」と脱帽するしかなかった。

 200メートル予選を一緒に走った藤光謙司(ゼンリン)はサニブラウンの精神面の成長を感じたという。「彼はどんな場面でも動じずに自分の世界を持っていた。道を開き、海外を拠点に練習したことで身についた強さなんだと思った」。自身は33歳となり、「僕ももうちょっと早く気づいて海外に挑戦すべきだった」と後悔をにじませた。

 サニブラウン本人も同じ考えだった。2冠を達成したことよりも、自ら決めた挑戦が正しかったと証明できた喜びの方が大きかった。「米国でチャレンジして身につけたことを成果として見せることができた。後に続いて、多くの人が海外でもまれることにチャレンジしてほしい」。当初は言語や文化の違いに戸惑ったというが、「今は英語のなまりもだいぶわかるようになった。毎日が刺激的」と話す。

 今後はフロリダ大で練習を積み、21日にロンドンで開催されるダイヤモンドリーグの400メートルリレーに日本代表として出場する。そこでは桐生や小池らが仲間になる。サニブラウンは言う。「自分が海外から戻ってくることによって、切磋琢磨(せっさたくま)して、みんなで速くなってリレーでもいい成績を狙いたい」。日本最速の男は、短距離界の将来も見据えている。(山口裕起)