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 6月中旬の放課後、長崎商(長崎県長崎市泉町)のグラウンドにアップテンポな曲が流れた。米国の人気歌手テイラー・スウィフトの「Shake It Off」だ。

 約60人の選手が代わる代わる打席に入り、バッティングマシンで打撃練習をする。カキーン、と小気味いい響きが、テイラーの歌声に重なった。

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 西口博之監督(58)は「盛り上がる曲でテンションを上げ、単調な練習にもやる気を持って取り組んでもらいたい」と、音楽をかける意図を明かす。冬場の走り込みでは、映画「ロッキー」のテーマ曲などを流す。リズムに乗ることで、体を動かしやすくする狙いもある。

 曲選びのポイントは「日本語の歌詞ではないこと」だ。「歌詞を口ずさんでしまい、集中力が途切れるので」と西口監督。だから、流すのは洋楽やK―POPの流行曲が多い。選曲をするマネジャー、瀬川あす香さん(2年)は「選手たちが楽しく練習できるといいな、と思いながら決めています」と話す。

 打線の中軸を担う相川晃甫(こうすけ)君(2年)は「音楽のリズムに体をあずけられ、余計な力を入れずに打つことができる」と語る。

 公立校で一番甲子園に近いと考えて、実家のある南島原市から同校に進んだ。「『ここ一番』で打ったらヒーローになれる」。本番の試合を想定し、ノリノリで練習に励む。

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 清峰(佐々町)では、約5年前から校外からダンス講師を招き、ダンスを練習に取り入れている。選手たちは日頃の練習だけでなく、試合前にも踊る。曲は米国の歌手ザック・ウォータースの「ロール・プレイヤー」という軽快なポップスだ。素早く両足を交差させたり、腰をひねったりと、下半身を動かす振り付けが多い。

 井手英介監督(39)は「ダンスで足腰の柔軟性が高まれば、試合での足さばきもよくなる」と効果を語る。エースの太田弘海君(3年)は「最初は『野球をやるのになんでダンスなんだ?』と思ったが、投球時の体重移動がスムーズにできるようになった」と、効き目を実感している。

 井手監督によると、過去に夏の大会後に燃え尽きたようになってしまう選手が何人かいたという。「野球以外にもできることがあったら楽しいし、かっこいいじゃないですか」。高校野球を終えたあとの人生を思う気持ちも、そこには込められている。

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 長崎国際大の今村裕行教授(運動生理学)は音楽とスポーツの関係について、「音楽を流すことで緊張がほぐれ、体が動かしやすくなる効果がある」と話す。また、試合でミスをしたあとに明るい曲を聞いて気持ちを切り替えたり、試合前にアップテンポな曲を聞いて気持ちを盛り上げて集中力を高めたり、といった活用法も効果的だという。(弓長理佳)