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 大崎中央(宮城県)は50人以上の部員を抱える大所帯だ。女子マネジャーの安部七海さん(3年)は、男子部員たちがグラウンドで練習する間、後輩のマネジャーと2人で毎日3升の米を炊き、大きな給水器に水を注ぐ。練習が終わるのは夜9時を過ぎ、40キロ離れた石巻に帰るのは午後11時近い。そんな日々を2年半続けてきたのは、「自分を変えたい」と誓ったからだ。

 中学までは内気な性格で、相手に強く言えず、人付き合いが苦手だった。何かを達成した覚えがなく、学校をつらく感じたこともあった。

 進学先の大崎中央で野球部があると知り、自分のソフトボールの経験を生かせると思い、マネジャーを志願した。両親や兄に影響されて野球好きだったこともある。でも何より、仲間を支えるマネジャーの仕事をやり遂げられれば、中学までの自分を変えられると思ったからだ。

 夜まで連日練習があり、男子部員のほとんどは学校の寮に住む。安部さんは自宅からの通学で、同じ石巻出身の平石朋浩監督は当初、「毎日石巻から大崎まで通うのは大変」と、入部に反対した。それでも安部さんは「母に迎えに来てもらうから」と譲らず、ついに入部を認められた。

 朝は5時に起きて石巻からのスクールバスで登校し、夜は練習後に母あけみさん(53)が車で来てくれる。睡眠時間を十分にとれず、慣れない炊飯に手間取ったりして叱られる日々が続いた。

 「ここで折れたら、中学のときと同じ」。そう自分に言い聞かせ、体調不良やテスト以外では、部活を一度も休まなかった。「自分がやりたいと思うことならやってみたら」と入部を応援してくれた母への感謝もあった。

 昨秋、先輩が引退してマネジャーは1人になった。不安はあったが、チームは県大会で3位に。11年ぶりに進んだ東北大会も初戦を逆転勝ちし、仲間の活躍に「こんなに強かったなんて」と驚いた。そして「今までやってきたことが実を結んだ」と、自分の努力も報われたと思った。

 冬はグラウンドに雪が積もり、男子部員は室内で練習する。狭い室内で球が飛んでくる恐れがあり、マネジャーは入れない。寮で1人でお米を炊きながら、「自分は何をやっているんだろう」と何度も思った。そんな時は寮母さんに相談したり、後輩の男子部員の手助けをもらったりして乗り切った。

 今春にはマネジャーの後輩ができた。ここまで続けられたのは「周りのおかげ」と感謝する一方で、自分自身に「ここまでやったんだという自信がついた」と思っている。ごみの分別がいい加減な部員は叱り飛ばし、グラウンドにバスで着いた部員たちには「急いで準備してっ」と声を掛けられるようになった。

 高校生活で、人のために動く楽しさを知った。その経験を生かして、将来は児童相談員になりたい。でも、まずは目の前の夏。「自分がここにいられる時間も短い」。最後の瞬間まで全力を尽くすつもりだ。