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 肝の据わった性格は、海外でプラスに働く。弱冠20歳ながら、J1鹿島のMF安部裕葵(ひろき)は物おじしない。大一番の前に意気込みを聞けば、必ず言う。

 「僕、緊張しないんで」

 昨年1月、ドイツから復帰した元日本代表DF内田篤人(31)の練習初日のことだ。大物を遠巻きに見る若手の中で、ただ一人、積極的に話しかけていったのが安部だった。その内田は「裕葵は日本でプレーするレベルの選手じゃない」と精神面を含めて、高く買っていた。

 バルセロナのBチームからトップに昇格するのは容易ではない。強気な言動や困難な道に挑む姿勢は、元日本代表MF本田圭佑(33)をほうふつさせる。中学時代の安部は、その本田がプロデュースするクラブでプレーしており、薫陶を受けて育った。

 ただ、高校時代までは無名の存在だった。サッカーの伝統校ではない広島・瀬戸内高に進学。高校総体でのプレーに居合わせた鹿島のスカウトが関心を持ち、見いだされた。そして、2017年に鹿島入り。独特のリズムで繰り出すドリブルが持ち味で、1年目からJ1で13試合に出場した。昨年はアジア・チャンピオンズリーグの初優勝に主力として貢献した。

 日本代表には若手主体で臨んだ南米選手権で初めて選ばれ、今年6月に代表デビューを飾った。大会の結果は1敗2分けで、1次リーグ敗退。「代表ではプレーの強度が違う。先発はみんな海外組」と、国内から飛び出す必要性を改めて感じていた。

 昨年12月のクラブワールドカップの準決勝では、スペイン1部の強豪レアル・マドリードに1―3で散った。ピッチで号泣した安部は、こう話していた。「成長していくために、今後どういう道を選択していくべきか。考え方が少し変わった」。バルセロナ最大のライバルに完敗したことが、ビッグクラブへの移籍を後押しした。(吉田純哉)