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(7日、高校野球茨城大会 東洋大牛久6―4緑岡)

 「4番の仕事をするぞ」。1点を追う七回裏2死一、三塁、東洋大牛久の阿部泰芽君(3年)が振り抜いた打球は、風に運ばれ、ライトスタンドに吸い込まれた。チームを救う逆転打は、大会第1号本塁打となった。

 相手先発投手の変化球にタイミングを外され、第3打席までは2三振を含む凡退が続いていた。「情けない結果で終わりたくない。高校最後の打席にはしない」。甘く入ったスライダーを思い切り引っ張った。スタンドからわき上がる歓声のなか、左手を高々と挙げ、気持ちよさそうに、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。

 1年生だった去年の2月、打撃不振になり、守備でもミスが相次いだ。失敗を引きずり、くよくよする性格。野球を辞めようか悩んでいたところ、矢野和哉監督が声をかけてきた。「朝練をするぞ」

 毎朝1時間、監督が投げる球を300球以上打ち込む毎日が始まった。埼玉県草加市から登校するため、自宅を出るのは朝5時前。「最初は朝早くて嫌だったけれど、続けるうちに飛距離が伸びた」。去年の夏はベンチ入りもできなかったが、1年続けるうちに段々と結果が表れ、自信がついた。いつしかチームの中心打者に成長していた。

 値千金の本塁打を放った打席中、風はライト方向に吹いていた。矢野監督は「何かやってくれると思っていたけれどまさか本塁打とは。猪突(ちょとつ)猛進に野球に打ち込む日頃の姿を見て、天が『阿部風』を吹かせてくれた」と喜んだ。

 2回戦はシード校、多賀高との対戦になる。阿部君は「ここからが本当のスタート。次もランナーをかえす4番の仕事をしたい」と視線を早くも次の試合に向けた。(佐々木凌)