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 瀬戸内の島にある分校、愛媛県立今治北大三島の野球部。部員は9人しかいないが、彼らには強い味方がいる。

 「わっかーい、ちっからあっ」

 7月初めの放課後、分校のグラウンドに力強い声が響きわたった。野球部が練習するそばで、全校生徒が1人ずつ、応援歌を練習していた。

 女子も男子も、歌うというより、全力で叫ぶ。「人数が少ないので、とにかく大きく声を出す。音程は気にしません」と、応援団長を務める三川幹哉君(3年)は言い切った。野球部以外の生徒たち約70人は、ときに学校近くの浜に集まり、海に向かって校歌や応援歌を叫ぶように歌う。

 こうして鍛えた声量は、球場のスタンドから選手たちに声援を送る「全校応援」で、威力を発揮する。70人ほどでも、その迫力は十分。野球部の金子真人(まなと)主将(3年)は初めて応援を目の当たりにしたとき、驚いた。「一人ひとりがすごい声量。球場でも『真人がんばれー』とはっきり聞こえてきた。本当に励みになる」

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 大三島自慢の全校応援。県高野連が毎年選ぶ愛媛大会の「応援優秀校」に過去44回選ばれ、校舎の一角には、表彰状がずらりと並ぶ。

 「でも、私の年は、表彰状ないんですよ」。分校の前身・大三島高卒業生の先田寿志(さきだかずし)監督(56)は苦笑する。現役時代、苦い思い出があるという。

 高3の夏、今治市営球場での初戦に備え、大三島野球部は球場近くの宿に泊まった。試合当日の朝、窓を開けると霧が広がっていた。チームメートがつぶやいた。「船出んや、これ」

 当時、島々を結ぶしまなみ海道は開通しておらず、島からの唯一の交通手段だった船が欠航。一塁側で声援を送るはずだった大三島の応援団はついに、球場に来ることができなかった。全校応援の後押しを欠いたチームは初戦で敗れてしまった。

 20年前、しまなみ海道が開通。以来、応援団は試合のたび、バスで橋を渡って球場に駆けつけ、チームに声援を送り続ける。

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 三川君は、主将の金子君と同じ大三島中野球部出身。分校では陸上部に入り、1年のときから応援団で野球部を応援してきた。

 「ここぞのところでホームラン打ってくれ」。幼なじみとして、普段から金子君に奮起を促してきた。「野球を一緒にやってきとったけん、本気で応援できる。野球部の支えになりたい」

 6月の抽選会。7月16日に西条市ひうち球場で迎える初戦の相手が昨夏8強の川之江に決まったと、金子君から知らされた。「マジか」と思いつつ、「相手が強豪校でもへっちゃら。今までやってきたことをやるだけだ」。球場で力の限り応援歌を叫ぶつもりだ。

 愛媛大会が13日に開幕する。島では毎年、分校の試合の前に、島民に応援を促す島内放送を流してきた。今年も「ご声援のほど、よろしくお願いいたします」と呼びかける。

 主将の金子君は意気込む。「大三島の地域みんなが一緒に戦ってくれる。積極的にプレーをして、納得のいく夏にしたい」(照井琢見)