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 練習前、徳島市の徳島北高校野球部の選手とマネジャーがグラウンドで円陣を組んだ。

 輪の真ん中で石川瑛己(えいき)君(3年)が声を張り上げる。

 「俺たちは誰だ!」

 「挑戦者だろ!」。声をそろえ、大きく上半身を反らせる選手たち。

 「誰がやるんだ!」

 「俺がやるんだ!」

 「俺だ!」「俺だ!」

 住吉圭吾監督(47)の提案で昨年12月に始めた「本気の朝礼」。練習や試合の前に全体の士気を高めるのが狙いだ。

 原案は居酒屋チェーンの店員向けの取り組み。住吉監督が昨年、県内であった発案者の講演を聴き、「不安になるのは失敗した時のことを考えるから。とにかくプラスに物事を考えさせよう」という言葉に共感したという。同じ頃、生光学園の野球部も「本気の朝礼」を始めたと知り、「試合で弱気になりがちな部員たちの意識を変えられるのでは」と考えた。

     ◇

 教室で「本気の朝礼」の動画を見せられた部員たち。「これをやるにはまとめ役が必要や。似合うのはあいつしかおらんわな」と住吉監督が話すと、全員の視線が石川君に集まった。「そうじゃ、石川じゃ」

 練習試合では劣勢でも、「夏の大会だったらこれで終わりやぞ!」とチームを鼓舞し続けるムードメーカー。石川君自身も「練習前に声を出して盛り上げたい」と思っていたといい、迷わず引き受けた。

 見よう見まねで始めてから約2週間。石川君は「内容を充実させよう」と部員にアイデアを募った。

 全員で15分間阿波踊りを踊る。全力で「サイコー!」と叫ぶ……。

 石川君が「お題」を出し、一人ずつ答えていくという案も出た。

 「ここは甲子園。サヨナラのチャンスに打席に立ちました。どの球をどこに打ちますか?」と声を張り上げる石川君。

 「ど真ん中の直球をバックスクリーンに運びます!」

     ◇

 練習前に気持ちを高めると、ウォーミングアップから自然に部員たちが笑顔になったという。「ダッシュも速く走れている。私語も減った」と石川君。自身も春の県大会で初めて、一塁手のレギュラーをつかんだ。

 その1回戦、チームは勝ったが、石川君はゴロを後逸する場面があった。

 試合後の練習で住吉監督に言われた。「メンタルを強化してきたんじゃないのか。いざというときに発揮できなくてどうする」

 守備では果敢に前に出る。バッティングは初球から振りに行く攻めの姿勢を貫こう――。次戦以降、弱気を払いのけ、徳島北は大会初優勝をつかんだ。

 住吉監督は「『本気の朝礼』は今の時代に合っている。明るく野球をするようになった」と話す。

 第3シードとして徳島大会に出場する徳島北。15日の初戦で、石川君はオロナミンC球場に本気の声を響かせる。