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 大会直前の八百津高校グラウンド(岐阜県八百津町)。野球部の練習では高校球児の象徴「丸刈り」ではない選手らが、元気にノックを受けていた。

 丸刈りの強制をやめたのはこの春。「髪形だけを理由に、野球を選ばない生徒がいるとしたらもったいない」。金子浩隆監督(50)が提案した。

 赴任した4年前、部員はわずか4人。野球部は休部中だった。「先生、丸刈りやとみんな入りたがりません」。部員の言葉に、自らの高校時代を思い出した。「意味など考えたこともなかった」。改めて理由を考えたが見つからない。「ただ従ってただけやった」

 髪の長さはプレーに関係ない。監督の役目は野球の魅力を伝えることだ。4月上旬、主将に相談した。

 「丸刈りの強制をやめようと思う」

 選手たちは驚いた。だが反対意見はなく、むしろ歓迎された。「古い伝統を無意味に続ける現状維持は嫌い」と金子監督。いつだって、高校野球の主役は選手たちだと思っている。

 羽島の山田智裕監督(29)は、前任の羽島北で、選手との意思疎通の大切さを感じた。

 昨夏の岐阜大会。初戦で強豪・中京学院大中京と対戦した。「まともにぶつかっては勝てない」。一計を案じ、選手たちに伝えた。

 「変化球で攻めて、とにかく送る」。自分たちのスタイルではないが、一矢報いて選手に自信をつけさせたい。たとえ1%でも勝てる可能性にかけた。

 提案後、選手と日々交わしていた野球ノートにこんな言葉を見つけた。

 「最後の夏、悔いのないように終わりたい」「最後まで自分たちらしい野球をやりきりたい」

 自分の思いを伝えるため、選手に何度も説明し、話し合った。

 自分が高校生の頃、監督は絶対だった。だが、監督になった今、上意下達では難しいと感じている。「今の選手には意味や目的を明確に伝えることが大切。納得しないと集中できない選手もいる」。フォーム修正を指示するときは、スイングの動画を撮って見せる。指示の根拠を明示するように心がけている。

 ただ、決して甘やかしているわけではない。「足、動かせ!」「そこ丁寧にやらなあかんよ!」。必要な指示は遠慮せずに出す。その上で、選手と一緒に考え、取り組みたいと思う。

 指導者が変わろうとするのは、伝統校も同じだ。県岐阜商の鍛治舎(かじしゃ)巧監督(68)は、少年野球の監督時代の経験を、現在の指導理念としている。

 「感情で叱らない」「選手の自己肯定感を上げる」「イメージさせながら指導する」……。週末しか会えない中学生のモチベーションを維持するためたどり着いた方法だ。

 時代が変わり、球児も変わった。いつまでも根性論だけでは選手は育たない。論理的に考え、具体的に伝える。「野球はサイエンス」が最近の持論だ。

 今年、県岐阜商の選手には対策マニュアルを渡した。個々のケースに応じて、動き方が具体的に書いてある。「選手と密にコミュニケーションを取り、分からないことを解消する。今、指導者に求められるのは忍耐力です」

 新たな時代を迎え、変わる高校野球。伝統と変化の狭間で模索が続く。選手とともに歩む指導者でありたい。多くの指導者がそう思いながら、新たな一ページを刻んでいる。(松山紫乃)