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 ハンセン病家族訴訟で政府が控訴しない方針を決めた9日、東京に集まった原告の中に、沖縄から駆けつけた元患者家族の姿もあった。561人の原告のうち約4割は沖縄県に住む。この裁判の先に、一つの望みを託している。

 原告の女性会社員(30代)は9日朝、政府に控訴しないよう求める行動に参加するため那覇空港を発った。飛行機が羽田に着陸し、スマートフォンの電源を入れた瞬間、仲間からのメッセージが相次いで届き、政府の方針を知って驚いた。

 永田町の衆院第一議員会館で開かれた原告と弁護団の集会は、喜びを分かち合い、国との協議に向けて決意を確認する場となった。「ほっとしています。やっとこれで、全面解決に向けてスタートラインにつける」。女性は取材に語った。

 自身が生まれる前、母親がハンセン病療養所沖縄愛楽園(沖縄県名護市)に入った。

 病歴が周囲に知られ、女性は近所の子に「ばい菌」と呼ばれ、遊び仲間の子の親には「うちに来ないで」と言われた。心の傷として残った。何も語らなかった母親から3年前、唐突に訴訟への参加を勧められ、涙ながらに過去の体験も聞かされた。

 原告団は12日の控訴期限までに、安倍晋三首相や根本匠厚生労働相との面談を求めている。もし面談がかなったら、女性は伝えたいことがある。地域から根こそぎ患者を排除して療養所に送り込んだ、かつての「無らい県運動」と同じだけの質量で、差別を無くす教育・啓発をやってほしい――。「それぐらい力を入れなければ、差別は無くならない」と話す。

 国と、国会議員の責任を認めた6月の熊本地裁判決の確定は「そのための大きな一歩」と考えている。(田中久稔)