写真・図版

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 楼蘭王国を一夜にして滅ぼされ、わたしは一人残され涙にくれていました。すると神の鳥がやってきてこう告げたのです。婚礼前日の一日をもう一回やり直させてあげるから、弟のウルスと仲直りしなさい、と。

 その方法は、じつに不思議なものでした。

 鳥は、自分の首を切り落とし、ウリと葡萄(ぶどう)と柳の葉で包むように命じました。わたしは言われるまま、ウルスの重たい剣をみつけて持ちあげ、こわごわ、鳥の首に振り下ろしました。そしてしっとりした首をたっぷりの葉っぱでくるみ、神殿の祭壇に供えました。

 神殿を出ると、何もかもが変わっていました。

 滅びたはずの楼蘭王国が、再びあったのです。

 色とりどりの服を着て行き交う人、湖から引いた水路を流れる砂混じりの白い水、笑い声。そして、明日に控えた式典のために立ち働く人々……。わたしは婚礼前日の朝に戻っていました。

 足をもつれさせ、走り、王宮の中庭に行きました。「ウルス! ウルス! どこ?」と何度も名前を呼びました。木漏れ日の向こうから、剣と剣がぶつかる音と青年の笑い声が響いています。「ウルス!」と飛びだすと、ウルスと剣仲間ワナントがびっくりして、

「マリア? どうしたんだよ。おまえが走ってるところ初めて見た」

 わたしは、生きている弟を前にし、へなへなと座りこんで「あぁ!」と言いました。

 二人が笑い、剣をおいて近づいてきました。「いよいよ明日ですね、王女さま」「マリア、こいつも近々結婚するんだって。幼なじみのミスラとさ」と早口で話す二人に加わって、わたしもお喋(しゃべ)りしました。

 時が巻き戻り、ウルスと取り返しのつかない喧嘩(けんか)をした過去が、消えていきました。

 わたしは名残惜しい楼蘭最後の一日をゆっくり過ごしました。親しい人の顔を見、声を聞き、素晴らしい王宮、栄える町、民の暮らしなどの風景を見て、その中にいる自分を感じました。やがて砂漠の夜が近づいてきます。わたしは神の鳥との約束通り神殿に向かいました。

 暗い神殿に入り、松明(たいまつ)の火をつけました。祭壇においた鳥の首をそっと持ちあげます。

 神の鳥とわたしは、こう約束し…

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