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 紀三井寺が雨雲に覆われた高校野球和歌山大会第2日の13日、1回戦3試合があった。第1試合では、大会第1号の本塁打が飛び出し、会場が熱気に包まれた。第3試合では、今大会初の点灯試合となり、球児たちの軌跡を照らした。

最初で最後の夏、闘志 慶風・角田涼馬君(3年)

 3点を追う一回裏2死三塁、慶風の4番打者、角田涼馬君(3年)が打席に入った。「絶対に自分で取り返したる」。初球を左前安打とし、1点をかえした。しかし、表情を崩さなかった。「あんまり感情を表に出す方ではないですね」

 先発投手として一回には、二塁打を2本打たれるなど調子が上がらなかった。「高校野球初めての公式戦。始まる前は緊張してたが、始まったら、やるしかないって気持ちになった」。その気持ちが空回りした。「気持ちに体が追いつかなかった」

 昨年、慶風に転校してきた。それまでは、京都の強豪私学にいた。思うような練習ができず、野球部も学校も辞めた。目標を失い、慶風に来てからも最初は部活の練習に気持ちが入らなかった。

 規定で転校から1年間は公式戦に出られず、昨夏はボールボーイとして、グラウンドにいた。間近でプレーを見ていると、「野球がやりたい。慶風で勝ちたい」と強く思った。以降、知り合いに練習メニューを教えてもらうなど、本気で取り組んだ。

 五回裏、慶風の打線がつながり、角田君も適時打を放つ。さらに、萩田誠也君(3年)の適時二塁打で本塁を踏むと、先に生還した主将の西畑勇杜君(3年)と勢いよくハイタッチをした。

 慶風が流れをつかんだかに思えたが、田辺の打線がつながり、角田君も七回途中でマウンドを降りた。

 5点差の九回裏2死走者なし。角田君はベンチから打席に向かって「思いっきり振れ」と声援を送った。涙があふれそうで、帽子で顔を隠した。「もう夏が終わる」という思い、「慶風のみんなと野球ができて良かった」という気持ちが交錯した。

 試合終了後、スタンドへ礼をすると、泣き崩れた。これで終わらない。野球を続けるつもりだ。(西岡矩毅)