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(14日、高校野球熊本大会 熊本国府11―2玉名)

 リブワーク藤崎台の第1試合、2回戦の熊本国府―玉名。シード校に挑む三塁側スタンドの玉名の応援席に、遺影を手に試合を見守る夫婦がいた。熊本市北区植木町の会社員西林尚綱(たかつな)さん(47)と久美さん(46)。今年1月31日に骨肉腫で亡くなった娘の蒼さん(享年19)は、玉名のマネジャーだった。

 野球好きの家族の影響で、蒼さんは中学3年の時には1人で球場に通うほどになっていた。高校1年の5月に骨肉腫を発症しているのが判明した。治療のため2年次は留年。3年目の秋に、野球部監督をしている1年の時の学級担任に誘われ、もともとやっていたソフトボール部のマネジャーから野球部に転向した。

 治療のため、東京の病院と熊本を行き来する日々が続いた。骨肉腫が足から発症していたため、普段歩くときは松葉杖を使っていた。重いものを持てないため、ボール渡しやボール磨きでチームに貢献した。

 昨夏の熊本大会もマネジャーとして参加する予定だったが、雨のため日程がずれ、東京での治療のため試合を見ることができなかった。結果は開新に0―1で惜敗。保護者がLINEで実況してくれるのを病院で見ながら、「一緒に応援したかった」「1試合でも勝ってもらいたい」と悔しがった。

 蒼さんが迎えられなかった今春の卒業式の日。尚綱さんの元を、今の野球部の2年と3年が訪れ、寄せ書きを渡してくれた。「ご卒業おめでとうございます」「天国で見守っていてください」……。部員たちは「大会で必ず勝って校歌をきかせる」と約束してくれた。

 そしてこの夏、約束は果たされた。1回戦で玉名は10―3で天草拓心に勝ち、球場に校歌が響いた。「この大会は校歌を聞かせるために来ました」。尚綱さんは待望の勝利を、スタンドで蒼さんの遺影と共に喜んだ。2回戦は敗れたが「よく頑張ってくれた」と選手たちをたたえた。

 玉名の栗屋翔世主将(3年)は試合を終えて、「西林さんに勝利をという気持ちは、チーム全員の心の中にあったと思う。1回だけでも勝てて良かった」と安心した表情を見せた。(渡辺七海)