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 昨年の西日本豪雨で3人が犠牲になった山口県では、住民が「ご近所」同士の連絡網をつくって避難を呼び掛け合う試みが始まっている。被災集落では、住民の半数近くが危険を感じながら、避難しなかった教訓を踏まえた。

 「あんまり降るようなら避難所に行きましょうね」

 2日午後、瀬戸内海を見渡す山口県柳井市遠崎(とおざき)の小高い住宅街で、自主防災組織の会長を務める西原光治さん(66)が、近所の橋岡恵美さん(70)宅を訪れて声をかけた。家の前は土砂災害特別警戒区域に指定された山林。翌日から、九州・山口には大雨の予報が出ていた。

 山口県内の土砂災害警戒区域は約2万5千カ所。全国で広島、島根、長野に次いで4番目に多い。西日本豪雨では、遠崎地区に大きな被害はなかったが、柳井市に隣接する同県の岩国市と周南市で、住宅が土砂で流されるなどして3人が亡くなった。

 県が昨年10月、被災した集落の130世帯を対象にアンケートしたところ、回答者のうち、激しい雨に「危ない」と感じても48・7%が避難行動を取っていなかったことが分かった。避難しなかった理由には「今まで大丈夫だった」「避難しなくてもいい場所だから」との声が上がった。

 この教訓を生かそうと、県は今年度、県内全19市町の土砂災害の危険が高い地域を対象に、「率先避難モデル事業」を開始。電話やメール、LINEで2~5人程度の連絡網をつくり、豪雨が迫れば連絡網に基づき呼びかけ合い、住民の避難につなげる取り組みだ。

 遠崎地区はそのモデル事業の対象の一つ。これまでに地区の約320世帯約630人のうち8割の世帯で連絡網ができた。5月には仮の連絡網に基づいて避難訓練も実施。西原さんは「全員が無事に避難することにもつながるのでは」と話している。(伊藤宏樹)