社民「瀬戸際」なぜ叫ぶ? 政党要件なしで「戦えない」

竹下由佳
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 結党23年、前身の日本社会党から数えると74年となる社民党が、今回の参院選を「党の存続の瀬戸際」と位置づけ、危機感を訴えている。「得票率2%」などのハードルを越えられなければ、政治活動は続けられても公職選挙法上の政党要件を失うからだ。「『政党』でなければもう戦えない」と幹部が嘆く理由とは――。

 「我々、社民党にとって正念場の、がけっぷちの戦いであります」。社民の吉川元・幹事長は20日、宮崎市内の街頭演説で訴えた。

 公選法が定める政党の要件は、「国会議員5人以上」か「直近の衆院選か参院選で2%以上の得票」。現在、社民の所属議員は衆参で計4人にとどまる。2017年衆院選比例区の得票率は1・69%で2%を割りこみ、16年参院選比例区の得票率2・74%で要件をつなぎとめている状態。今回「2%」を下回れば政党要件を失う公算が大きい。

 政治資金規正法と政党助成法上の「政党」は前々回の16年参院選の結果も認められるため、政党交付金などは今回の結果に関わらず受けることができる。それでも社民が危機感を募らせるのは、次の国政選挙で「足かせ」をはめられるからだ。

 公選法上の政党要件を失うと、衆院選では選挙区と比例区の重複立候補ができなくなる。選挙区で立候補しても政見放送を流せないほか、ビラやポスターも政党に上乗せして認められている分は配布できなくなる。

 参院選では、選挙区と比例区で「計10人以上」を擁立しなければ、比例区に候補者を立てることができない。今回、山本太郎参院議員が1人で立ち上げた政治団体「れいわ新選組」が10人の擁立にこだわったのも、比例区への挑戦権を得るためだ。社民幹部は「うちは10人も立てられない。公選法上の政党要件を失ったら、その後の選挙はもう戦えない」とこぼす。

 12年の衆院選では「新党日本」が公選法上の政党要件の待遇を失ったまま臨み、唯一の国会議員だった田中康夫代表(元長野県知事)は重複立候補ができない状態で兵庫8区に出馬し落選。新党日本は国政から姿を消した。(竹下由佳)

政党要件を失った場合の主な「制約」

【公職選挙法】

 <衆院選>

 ・選挙区と比例区の重複立候補ができない

 ・選挙区の候補者が政見放送を流せない

 ・ビラは選挙区で7万枚以内

 <参院選>

 ・選挙区と比例区で計10人以上を擁立しなければ、比例区に候補者を立てることができない

【政党助成法】

 ・議員数や選挙の得票数に応じた政党交付金を受け取れない

【政治資金規正法】

 ・企業や団体からの寄付が受けられない

 ・個人からの寄付の上限が2000万円から1000万円に

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