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【アピタル+】患者を生きる・眠る「ぜんそく」(予防的な治療)

 ぜんそくは、睡眠中の夜間から朝方にかけて発作が起きやすく、眠りにも支障が出てしまいます。なぜ、この時間帯に発作が起きやすいのか。患者はどんなことに気をつけたらいいのか。東邦大学医療センター大橋病院(東京)呼吸器内科の松瀬厚人(まつせ・ひろと)教授(54)に聞きました。

――なぜ、夜間から朝方にかけて発作が起きやすいのでしょうか。

 ぜんそくの本質は、気道の炎症です。炎症のためにとても敏感な状態になっていて、そこに様々な刺激が加わると、気道が収縮して狭くなり、せきが出たり、息苦しくなったりします。

 (気道の)炎症と収縮。それぞれの観点から考えると、夜間は不利なことがたくさんあります。

 まず炎症ですが、炎症を抑える作用のある「ステロイドホルモン」の分泌は、寝ている間の夜から朝方にかけてが、もっとも減少します。このため炎症が強くなって、気道の粘膜は敏感になり、発作が起きやすくなります。

 また、収縮には自律神経が関係しています。日中は緊張にかかわる交感神経が活発になり、夜はリラックスにかかわる副交感神経のほうが強くなって体を休めます。交感神経は気道を拡張させるはたらきがあるのに対し、副交感神経は気道を収縮させる方向にはたらきます。そうなると、息苦しさやせきも起きやすくなります。

 さらに、寝ているときに鼻がつまっているなどの理由で、口呼吸になっている場合、乾燥した空気が口から入ってきやすくなります。炎症が起きている粘膜にとって刺激となり、発作を招きます。

写真・図版

――実際に、夜間に発作が起きて受診する人は多いのでしょうか?

 以前に比べれば、夜間に発作が起きて救急外来を受診するケースは減っていると思います。

 かつては、気管支を広げる薬を使ってぜんそくの発作を止める治療が中心でしたが、ぜんそくの原因が気道の炎症だとわかり、普段から炎症を抑えることで発作を防ぐ、「予防的な治療」の重要性が指摘されるようになりました。

 大きかったのは1990年代に広まった、吸入タイプのステイロイドホルモン薬です。それまでの経口タイプのステロイドホルモン薬と異なり、直接気道に届くため効果も高く、誤ってのみ込むことがあっても極めて量は少なく、胃腸から吸収されても肝臓で分解され、全身への副作用は示しません。

 この薬を症状のないときから使って炎症を抑え、発作を防ぐことが重要です。こうした治療の進歩により、以前に比べて発作をコントロールすることが可能になりました。夜間に発作が起きた場合でも、あらかじめ受けている医師の指導に従って、薬の量を増やしたり、気管支を広げる薬を一緒に使ったりします。こうした方法が広まり、夜間に発作が起きても、緊急に受診が必要になるケースはかなり少なくなっていると思います。

治療薬の副作用

――吸入タイプのステイロイドホルモン薬の副作用はないのでしょうか?

 ステロイドホルモン薬の副作用は、白内障や緑内障、顔が丸くなる「ムーンフェース」、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、糖尿病など全身いろいろあり、経口タイプでは使いにくい場合もありました。しかし、吸入タイプでは、成人が決められた量を使えば、体への影響はほとんどないといえます。

 ただ、人によっては声が枯れてしまう副作用が出る場合もあります。このため、使用後はうがいをして薬を洗い流すことが重要です。私は、使用後に歯を磨くことをすすめています。吸入はだいたい朝とか夜寝る前なので、歯ブラシの横に薬を置いておくことで習慣づけられますし、口をゆすぐときに自然とうがいをしていることになります。

――夜間の発作が不安な患者は、どんなことを心がけたらいいでしょうか?

 ふだんの治療をしっかり続けることが何よりも大切です。自己判断で治療を中断すると炎症が進んで、発作を招きます。とくに成人の場合は完治は難しいことが知られています。

 また、発作は風邪をひいたことをきっかけに起きることが多いです。風邪を完全に予防することは難しいですが、ふだんの生活のなかでなるべく無理はせず、ストレスや疲れをためないようにしてください。

 あまり不安がらないことも大切だと思います。主治医を信頼し、日ごろから治療をしておくことが何より重要です。

 ひどいときには病院に行ってください。薬の種類や量を見直す必要がある可能性があります。主治医に相談してください。

◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・眠る>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・武田耕太)