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 みなさん「ピア・サポート」という言葉を聞いたことはありますか? 「ピア(peer)」という言葉には、「同じ体験をした仲間」という意味があり、ピア・サポートとは、「同じ体験をした当事者同士が集い、そのときの気持ちの持ちようや生活の知恵を分かち合うこと」を言います。また、こうした集いの場のことを「患者サロン」と呼んだりもします。私たちも取り組んでいますが、どんな人たちからどんな相談があるのか、紹介します。

 ピア・サポートは、病院の中で開催されているだけではなく、病院の外、つまり地域で開催されているものや、最近は、電話やインターネットなどを介して開催されているものもあります。開催のかたちも、行政と連携をしたり、患者団体が自主的に開催したりと、多様化しています。

 私が代表を務めている一般社団法人CSRプロジェクトでは、2008年の設立以来、ピア・サポートを実施しています。働くことに関連した悩みやお金の悩みなど、働く世代に多い悩みを語り合うことを目的にしており、病院の外で、夜間(19~20時)に企業の会議室を借りて、「患者サロン」を開催しています。

 罹患(りかん)部位や年齢を限定していないので、乳がんや大腸がんといった数の多いがんの患者さんだけではなく、希少がんの患者さんも参加しています。また、年齢についても、大学生から50代と幅広く、私たち自身も、悩みや生き方の多様性に毎回教えられることがあります。

電話相談には男性も

 患者サロンのように、直接、顔をあわせて語り合うのではなく、「ほっとコール」と呼ぶ電話相談も開催しています。相談したい方に、相談日時を選んでもらい、相談内容などを事前に知らせていただきます。そのうえで40分間、無料でお話しをうかがっています。

 就労相談は、働くことに関する法制度の知識も必要です。このため、がんを経験した人や、もしくは、がん患者の相談支援にあたっている社会保険労務士や社会福祉士(ソーシャルワーカー)、キャリアコンサルタント、人事労務経験者などが、2人で対応をしています。

 電話をもらい、「私たちもがん体験者なのですよ」と打ち明けると、驚かれたり、安心されたり、反応は様々です。相手の方のお話に寄り添いながら、考えられる制度や仕組み、コミュニケーションの取り方などを伝え、悩みの交通整理をするようにしています。

 相談の枠は1カ月に6コマ用意していますが、体調不良などによるキャンセルもあり、昨年4月から今年3月の1年間では、44件の相談を受けました。相談者の年齢は、40代~50代で9割を占めており、まさに、現役で働く世代になります。がんの部位は乳がんが一番多く、約5割を占めました。男女比は、女性が多くを占めていますが、男性からも2~3割あります。一般的に、男性のがん患者会活動への参加率は低いと推測されているので、「2~3割」あることは電話相談の特徴の一つと言えます。

目立つAYA世代

 昨年は11%でしたが、通年でみると、全体の1~2割が、20代~30代のAYA世代のがん患者さんが占めています(AYA世代=Adolescent and Young Adult 15歳から39歳でがんの診断を受けた方を言います)。1年間にがんと診断される人のうち、AYA世代が占める割合は2~3%ですから、相談者の割合としては高いことがわかります。診断された部位の3割程度が、横紋筋肉腫や脳腫瘍(しゅよう)、リンパ腫など、AYA世代に多いさまざまながんが占めていることからも、若い世代にも働くことの悩みは多いことがうかがえます。

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 診断からの経過年数は、「1年以上、3年未満」が6割を超えており、いわゆる診断直後の「6カ月未満」の相談は1割程度しかないことや、診断から「5年以上経過」しても働くことに悩んでいる人が2割程度いることも特徴的で、働く悩みは長い期間にわたって患者さんの生活に影響していることがわかります。

 治療状況の約6割が「経過観察中」となっており、病院へ通う頻度は、治療中と比べて少なくなっていますから、地域で相談できる場所があることの大切さが見えます。

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 相談内容は、「今後の働き方(雇用継続)」が最も多く、次いで「不安など精神的なこと」や「職場の理解・人間関係」となっています。復職した後の働き方の調整で悩んでいることが見えてきます。これは診断からの経過年数が1年以上の方が多いことも影響していると思います。このほか、治療のために休職をされていた方が「復職のタイミング」や「休職の継続」について相談されることも目立ってきています。

 電話相談を始めた10年前は、新規就労の相談が全体の半数を占めていましたが、最近は、「両立支援」に関する相談が増えていることも変化のひとつだと思っています。

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患者を孤独にさせない

 最近では、がん診療連携拠点病院の中に、就労の専門家による相談窓口ができたり、ハローワークの出張相談が設けられたりするようになってきました。まだまだ十分ではありませんが、がんにおいては、患者さんの仕事を支援することが診療報酬でも評価されるようになってきました。

 病院の中だけでは解決できない課題もたくさんあります。病院と地域が連携をし、患者さんに寄り添い支えていく、自立支援が大切なのだと、今年の結果をみながら改めて感じたところです。

 がん患者や家族向けの相談施設「マギーズ東京」のような、看護師さんが地域で相談を受ける場所などもあります。こうした地域の相談場所が、もっと増えてほしいですね。そして、がんだけではなく、難病や脳卒中など、他の病気にもどんどん広がっていくことにも期待をしています。

<アピタル:がん、そして働く>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/(アピタル・桜井なおみ)

アピタル・桜井なおみ

アピタル・桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。