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 与野党党首らが参院選の選挙戦最終日の20日、各地で最後の訴えを行った。年金、消費増税、憲法――、17日間の夏の政治決戦で、なにを訴えてきたのか。

 安倍晋三首相(自民党総裁)の20日の街頭演説は、秋田市から始まった。自民候補が野党5党派が一本化した統一候補と激突している「1人区」の一つだ。

 「不適切な対応があったのは極めて遺憾で言語道断だ。おわび申し上げる」

 最初にこう切り出して陳謝したのは、地元の陸上自衛隊演習場に配備する計画がある陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の適地調査をめぐる不手際の問題だった。再調査を約束しつつ、装備が「どうしても必要だ」と理解を求めた。公示後、秋田入りは2度目となる。

 また、首相は秋田市での演説で憲法改正にも言及した。「共産党は、自衛隊を憲法違反だと言っている。この違憲論争に終止符を打つために、憲法に自衛隊を明記することを(自民党の)公約にうたっている」と強調した。この参院選では、首相はこれまでになく改憲の話題を前面に出している。

 ただ、首相はさいたま市で20日に行った公明党候補の応援演説では改憲の話題を「封印」。9条改正に慎重姿勢を示す公明に配慮を見せた。

 首相の野党批判も目立った。立憲民主党の枝野幸男代表を「民主党の枝野さん」と呼ぶ「言い間違え」を連発。野党側が反発すると、「怒るならば毎回毎回、党名を変えないでもらいたい。覚えられない」と皮肉った。73カ所目となる最後の訴えは、定番のJR秋葉原駅前。日の丸の小旗を振る聴衆を前に支持を呼びかけて締めくくった。

 公明の山口那津男代表は20日、公示日の第一声と同様に、最重点区に位置づける兵庫選挙区から訴えをスタートした。山口氏は神戸市で「政治の安定が問われている選挙だ」と指摘。自公連立の第2次安倍政権発足以降、名目GDP(国内総生産)が増加し、株価や最低賃金が上昇したことを成果として語った。

 野党が消費税率10%引き上げの凍結などを訴えるのを念頭に、教育無償化などの財源に充てることを繰り返し説明し、理解を求めた。消費税率引き上げに備え、飲食料品などに軽減税率が適用されるが、山口氏は「軽減税率は公明党が訴え続けて実現した『生活減税』だ」とアピールした。

 一方、首相が選挙戦で改憲論議の是非を問うている点について、山口氏は「議論まで拒否している政党はない。争点として熟度が浅い」と疑問を呈していた。改憲に関する街頭の訴えは、ほとんどなかった。

野党、アベノミクスや「2千万円」を批判

 「強い企業をよりもうけさせるために不安定な働き方が増え、賃金は抑え込まれている」。立憲民主党の枝野幸男代表は20日、大阪市の中心部でアベノミクス批判を展開した。序盤は1人区を回りながら年金問題を訴えてきたが、投開票日が近づくにつれて消費増税への批判を強め始めた。この日も「企業は過去最高の利益を出しているのだから、バブル期ぐらい税金を払える」と訴えた。

 アベノミクスを高額所得者優遇と位置づけ、党の看板政策「家計所得の引き上げ」をアピールする。首相が求める改憲論議には「やらなきゃいけない議論は老後の安心、子育て支援、正社員化だ」と反論した。

 国民民主党の玉木雄一郎代表も広島市で、老後「2千万円」不足問題や貧困問題について「税金の使い道を変えれば、暮らしはもっと豊かなものに変えることができる」と主張した。国民も「家計第一」を掲げている。首相が同党に秋波を送る改憲論議にも距離を置く。首相が討論会などで発言の制限時間を守らないことを挙げ、「最高のルールが憲法だ。小さなルールを守れない人は大きなルールを守れない。憲法に基づいた権力行使が正しく行われるような政治を取り戻そう」と訴えた。

 関西の都市部を回った共産党の志位和夫委員長は一貫して年金不安への追及を続ける。少子高齢化に合わせて年金水準を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」について「いまでさえ貧しい年金を、もっと減らしてしまう」と批判。廃止するため、高所得者の保険料引き上げなどで財源を確保すると訴えた。富裕層への課税強化などで財源をつくり、低年金者の年金も底上げするとの立場だ。

 日本維新の会の松井一郎代表は、この日も本拠地の大阪・兵庫でマイクを握った。自公を「緩み、たるみ、おごりがある」と指摘しつつ、消費増税中止では足並みをそろえる立憲や共産などの野党にも「何でもかんでも反対」と批判。是々非々のスタンスを強調しながら、看板の「身を切る改革」を訴えた。

 地方での戦いを重視する社民党の吉川元・幹事長は、宮崎市で「社民党は憲法9条を守ることを党是としてきた。憲法を守り抜く」と訴えた。公職選挙法上の政党要件の維持をかけた「崖っぷちの戦い」として選挙戦を展開する中、護憲色を強めることで他の野党との差別化を図った。

 全国の主要都市を回ってきたれいわ新選組の山本太郎代表は、新宿駅やJR甲府駅の前で演説を展開。「この国を衰退国に一歩踏み入れさせてしまった諸悪の根源、消費税をやめる」と訴えた。新宿駅前での最後の街頭演説には多くの聴衆を集めた。

     ◇

8党首らの最終日の演説内容

※朝日新聞が独自に集計。「その他」は候補者への支持の呼びかけなど。場所は集計した演説を行った場所

【自民】安倍晋三首相(党総裁) 秋田市 18分5秒

「憲法を議論するか、拒否するかを決める選挙」

 野党批判  ( 3%)

 改憲    ( 6%)

 年金・社会保障(21%)

 経済    (35%)

 その他   (35%)

【公明】 山口那津男代表 神戸市 7分20秒

「小さな声を聴く力を生かす政治を進める」

 消費増税  ( 9%)

 経済    (23%)

 教育無償化 ( 9%)

 軽減税率  (11%)

 その他   (48%)

【立憲】 枝野幸男代表 浜松市 18分40秒

「老後・子育て・雇用・賃金の下支えをする」

 政権の体質 ( 9%)

 年金    (12%)

 家計支援  (27%)

 多様性   (13%)

 その他   (39%)

【国民】 玉木雄一郎代表 広島市 12分35秒

「生活者、働く人にスポットライトをあてる」

 政権の体質 (15%)

 憲法    (10%)

 貧困    (36%)

 その他   (39%)

【共産】 志位和夫委員長 京都市 10分35秒

「消費税10%、みんなの1票で止められる」

 年金    (26%)

 消費増税中止(17%)

 生活支援  (16%)

 護憲    (16%)

 その他   (25%)

【維新】 松井一郎代表 神戸市 11分30秒

「政治家は厚遇され過ぎ。身を切る改革を」

 与野党批判 (10%)

 消費増税凍結(17%)

 大阪での実績(14%)

 身を切る改革(51%)

 その他   ( 8%)

【社民】 吉川元幹事長 宮崎市 15分40秒

「憲法9条を守り、そして平和を守る」

 護憲    (36%)

 年金    ( 9%)

 消費増税中止(13%)

 教育無償化 (22%)

 その他   (20%)

【れいわ】 山本太郎代表 甲府市 1時間6分

「消費増税は大間違い。消費税は廃止」

 消費税廃止 (35%)

 子育て   (14%)

 経済    (14%)

 公明党批判 ( 9%)

 その他   (28%)