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 全国高校野球選手権香川大会7日目の22日、高松市のレクザムスタジアムで1試合があった。観音寺一がコールド勝ちで8強入り。第2試合に予定されていた英明―志度戦は雨で中止になった。

父のメロディー 力くれた 高専高松 美安理句主将

 高専高松の主将、美安理句(みやすりく)(3年)が一回の打席に向かうと、背後のスタンドから曲が流れてきた。

 応援歌の「残酷な天使のテーゼ」。2年前に亡くなった父の明久さん(当時49)が大好きだったアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のテーマ曲だ。

 初球は、真ん中に甘く入ったスライダー。体が勝手に反応した。右中間に落ちる二塁打。初戦はヒットを打てなかった。「今日こそは」と臨んでいただけに、ほっとした。

 あの曲は5月、吹奏楽部が学校で練習しているのをたまたま耳にした。本来は選手の応援歌ではなかったが、演奏してもらえるようお願いをした。打席に立っているときに聞こえてきたら、父が見ているように感じられると思った。

 父は、入っていた少年野球チームのコーチだった。グラウンドで野球を教わり、週末は2人でバッティングセンターに通った。父の小遣いは、そこの練習代に消えたと後で聞いた。

 高校で県外の親元を離れ、寮生活を始めた。1年生の夏に背番号をもらうと、父は応援に駆けつけてくれた。打席には立てなかったが、うれしかった。

 元気そうに見えた父が危篤になったとの連絡が入ったのは、その2週間後だ。心筋梗塞(こうそく)による急死だった。いなくなって初めて、父の存在が心の支えだったことに気づいた。

 父が教えてくれた野球の集中力だけは大切にした。主将として捕手として、また、打線の主軸として、チームを支える自分が自立しないとだめだとも思う。

 この日もピンチになるたび、マウンドに駆け寄って投手を励ました。点差が開き、沈んだ雰囲気になると、誰よりも大きな声を出した。「ここで絶対、(攻撃を)切るぞ!」

 父が倒れた後、携帯にLINE(ライン)のメッセージを送った。「16年間支えてくれてありがとう」。チームは敗れたが、気持ちは変わらない。野球をやらせてくれてありがとう。(平岡春人)