[PR]

 全国高校野球選手権福岡大会13日目の22日は5回戦4試合があり、4校が8強に名乗りをあげた。筑陽学園は九回裏1死走者なしから4長短打に四球、敵失を絡めて3点差をはね返した。今大会の台風の目だった九産大九州は優勝候補筆頭をあと一歩まで追い詰めた。小倉工は1点差の延長十一回裏1死走者なしから2点を奪い、逆転サヨナラ勝ち。16強の激突は勝利の女神がどちらにほほ笑むか、最後までわからない。

1球分のズレ 流れ失った 九産大九州・野田壮吾投手

 ボール1個分。ストライクゾーンからのわずかなズレが、その後の投球の狂いを生んだ。

 3点リードの九回裏1死走者なし。それまで強打の筑陽打線を零封に抑えていた九産大九州の左腕の野田壮吾君(2年)が投じた4球目はボールの判定。「えっ」。四球となった。

 相手ベンチやスタンドが沸き始めた。次打者には右中間にはじかれ、四球で出た走者が全力で塁を駆け抜け、生還した。

 流れが変わった。立て続けに安打を浴び、同点とされ、なお1死満塁。捕手の堤皓志君(3年)が駆け寄ってくる。「失う物は何もない。逃げずに腹くくって投げろ」。もちろんそのつもりだった。だが、渾身(こんしん)のスライダーを痛打された。三塁走者がかえり、試合終了。仲間が整列する中、体を大きく曲げ、しばらく顔を上げられなかった。

 昨年、上手投げから横手投げに変えた。そのフォームは独特だ。軸足となる左足をプレートの左端に置き、右足を一塁線側に大きく踏み込む。

 最速124キロ。打者の手前で沈むように大きく変化する。部長と相談して改造した投法だ。横手投げだから、打者には球の出どころも見えにくくなった。

 今大会2試合はピンチの場面で再三登板し、計9回と3分の1を被安打6と好投した。この日は先発の大役を任され、八回まで強打の筑陽学園打線に得点を与えなかった。それだけに九回が悔やまれた。

 「最後まで粘れなかった。1球の重みを知った」と、野田君は厳しい表情だった。来夏、一回りも二回りも成長して、この舞台に戻ってくる決意だ。(棚橋咲月)