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(23日、高校野球熊本大会 九州学院4―2秀岳館)

 六回。点差は3に広がっていた。秀岳館は九州学院のエース蒔田を打ちあぐね、ここまでに放った安打はわずか2本。田浦由亮(3年)は「とにかく本塁に帰る」という思いで打席に入った。

 2ストライクからの6球目を中前に運び出塁。次打者への2球目で二盗を決めた。これが功を奏し、後続の適時打で生還。2点差に迫った。

 足には自信があった。だから、「とにかく塁に出ること」を意識してきたという。今大会は準々決勝までの4試合で打率6割超。自慢の足もいかして7得点で貢献してきた。

 この日も、一回に四球を選んで出塁。すかさず二盗を決め、その後、居石の犠飛で生還していた。

 秀岳館へは「お兄ちゃんを追いかけて来た」という。投手として春夏合わせて甲子園に4回出場し、現在はプロ野球ソフトバンクの田浦文丸(19)のことだ。小学1年の時、兄の所属していたクラブチームに入団。その後中学、高校と同じ学校へ進んだ。一昨年の夏、甲子園で投げる兄をスタンドから応援しながら「すごいな」と、その姿を目標にしてきた。

 だが、七回は三振に倒れ、これが最後の打席となった。

 追いかけた兄と同じ舞台に立つことはできなかった。だが、この日の秀岳館の得点の全てを稼いでみせた田浦は、涙を見せなかった。「悔いはない。チームメートに、今までありがとうと伝えたい」。落ち着いた表情でそう言った。(渡辺七海)