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 第101回全国高校野球選手権鹿児島大会は23日、準々決勝の2試合があった。神村学園は九回に3点差をひっくり返し、大島にサヨナラ勝ち。ノーシードの国分中央はシードの鹿児島情報に終盤の集中打で逆転し、4強入りした。

「エンジョイ」野球に魅了 大島のエース・赤崎太優主将

 第一シードの神村学園に3点リードし、迎えた九回裏。勝利まであとアウト三つだった。

 マウンドの大島のエースで主将、赤崎太優(たいゆう)君(3年)には、ふとスタンドの声援が大きく聞こえた。「守り切れるのか」。急に怖くなった。連打を浴び1点差まで詰めよられ、なお1死二、三塁。その後の記憶はぼんやりしている。甘い球ではなかったはずだが、打球が内野を抜けた。相手ベンチから選手が飛び出した。逆転サヨナラ負けに気づいた。

 野球をやるために大島に入学した。鹿屋市の鹿屋東中学時代、姉に勧められ、体験入学をした大島で塗木哲哉監督と出会った。

 「エンジョイング・ベースボール」が監督の教えだった。ピンチでもチャンスでも、とにかく野球を笑顔で楽しむ。それを実践する大島野球部の先輩たちが輝いて見えた。

 自身も笑顔を絶やさない塗木監督。野球以外のことでも、あいさつの仕方から主将としての立ち振る舞いまで教わった。「つらい顔をみせるな、主将として、みんなの前を走れ」。そう励まされた。遠征先の温泉で湯船につかり、語り合ったこともある。

 試合終了の整列のときから涙が止まらなかった。1人で立てず仲間に支えられ球場を出た。球場の外でも正座したままコンクリートの上に顔を伏せて泣いた。手に握りしめていた帽子のつばの裏に「主将力」というマジック書きの文字が見えた。

 2年生の藤本涼也君も、大島の「エンジョイ」野球の魅力にひかれ、島外から入学した1人だ。中3の夏、偶然みた大島の試合。「なぜ、こんなに楽しそうに野球をしているんだろう」。同じ中学の先輩でもあった赤崎君に連絡をとると、塗木監督やチームの魅力を教えてくれた。

 監督の言葉で最も心に残るのは「監督から信頼されるより、仲間から信頼される人になれ」。先輩の赤崎主将をみて、本当にそう思う。「先輩を超えたい。来年絶対勝ちたい」。何度も口にした。

 試合後のミーティング。塗木監督は「今まで愛してもらえなかった野球の神様にこの大会は振り向いてもらえたんじゃないか」。選手を見渡し、そう言った。

 「最後、神村の甲子園に行きたい気持ちが勝ったが、みんなやり切っただろう。ベスト4まであと1イニング。それが高校野球の難しさ、素晴らしさだ。ありがとう。さあ、みんなで島に帰ろう」(合田純奈、小瀬康太郎)