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(24日、高校野球徳島大会 富岡西12―2脇町)

 五回裏1死満塁のピンチ。脇町の工藤祐輝捕手(3年)はマウンドに駆け寄った。「絶対に九回までやりたい。もうひと踏ん張りだ」

 父の顔は知らず、中学3年の夏、母をがんで亡くした。通夜に訪れたチームメートの篠原大輝君(3年)が「俺らも支えるけん頑張ろう」と言ってくれた。一緒に脇町に進み、「もう一度野球をやろう」と思えるようになった。

 80代の祖母と2人暮らし。片道10キロを原付きバイクで通う。試合から帰ると真っ先に結果を聞いてくれる祖母。負けた日は「次、頑張りーや」となぐさめてくれた。13日の徳島大会の開幕試合、今のチームの公式戦初勝利を報告できた。

 選抜出場の富岡西との2回戦。制球に苦しむ投手に何度となく駆け寄った。「自分のいい球を投げれば、野手がさばくから」

 適時打で2点を失い、四球でさらに満塁。6番打者の打球は、コールドゲームを決める三塁打になった。

 あいさつの後、悔しさを隠して、三回に死球を当てた富岡西のエース浮橋幸太君(3年)に「大丈夫?」と声をかけにいった。

 涙を浮かべて、スタンドに一礼した工藤君。野球生活には区切りをつけて、医療の道をめざす。「親を亡くした子たちに、自分にしかできないアドバイスをしたい」(高橋豪)