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(24日、高校野球西東京大会 桜美林6―4日大三)

 予期せぬ序盤の試合展開だった。日大三は先発投手が桜美林打線につかまり、継投した投手も勢いを止められない。3点を追う三回、無死二塁となった場面で日大三のエース右腕井上広輝(3年)がマウンドに向かった。

 「もう点はやれない」。思いとは裏腹に、投球は本来の出来にほど遠かった。直球は140キロ中盤を計測するものの、コースに決まらない。変化球も高めに浮く。9番打者に四球を与えるなどして1死満塁とされると犠飛で1点を失った。「気持ちの整理ができないまま、修正できなかった」。五回と七回にも1点ずつ許した。

 それでもスライダーやチェンジアップなど制球できる球種を模索しながら要所を締め、7三振を奪って踏ん張った。「自分の力でみんなを甲子園に連れて行く」ためだった。

 昨年も控え投手としてベンチ入りしていたが、春に右ひじを故障して西東京大会には登板できなかった。チームは苦しみながらも接戦を制して優勝。けがから復帰した井上は甲子園の2回戦、奈良大付戦に登板して150キロを計測すると、準優勝した金足農(秋田)との準決勝でも好投し、注目の存在となった。

 新チームになり、甲子園経験者としてチームを引っ張る自覚が芽生えた。理想のエース像は、同じ日大三の右腕エースとして2011年夏の甲子園で全国制覇した吉永健太朗さん(現JR東日本)だ。小学生の時にその姿を見て憧れ、日大三の門をたたいた。

 「マウンドに立つだけで試合の流れを引き寄せられる、圧倒的な投手になる」

 完投できるスタミナを付けるため、この1年間は走り込みやスクワットなど下半身の強化にいっそう取り組んできた。

 この夏、チームは三、四回戦で打線がなかなかつながらなかったが、その分、井上ら投手陣が力投。この日の桜美林戦では、本調子でないエースのために打線が11安打を放って食らいついたが、あと一歩及ばなかった。それだけに敗戦の責任を背負った。「精神的に弱かった。ピンチで抑えられず、悔しいです」(原田悠自)