幼なじみ、準々決勝で初対決 試合後、小走りで姿探した
全国高校野球選手権石川大会は24日、県立野球場で準々決勝2試合があった。梅雨明けの青空のもと、いずれも1点を争う好ゲームを展開し、星稜が遊学館を、小松大谷が航空石川を破り、準決勝進出を決めた。25日は同野球場で準々決勝2試合が予定されている。
(小松大谷5-4航空石川)
航空石川の二塁手、早田陽洋(やひろ)君(3年)にとって、特別な試合が終わった。
相手の小松大谷の右翼手、宮本洸誠(こうせい)君(同)は幼なじみ。小学校と中学校では同じチーム。けれど、別々の高校で野球をすることを選んだ。
高校進学後も、寮生活を送る早田君が地元に帰ったときは、キャッチボールをすることもあった。そんな2人の高校初対戦が、この日の準々決勝だった。
「率直にうれしかった」と早田君。「まさか対戦するとは思っていなかった」という宮本君にSNSで連絡をとった。「負けない」「お互い悔いなく、最後まで楽しくやろう」。親友との熱いやりとりが続いた。
試合は準々決勝にふさわしい、手に汗握る展開となった。二回に先制した航空石川だが、その裏、小松大谷に逆転され、その後は点差が開いた。ようやく七回表、相手投手をつかまえ、連打などで3点返した。
1点を追う八回表の先頭打者は早田君。「塁に出たら、あとの打者がかえしてくれる」と意気込んでいた。だが、結果はショートゴロ。最後の打席を結果につなげられなかった。
ゲームセットのコールがかかり、両校の選手が礼をした。早田君の前に宮本君がやって来た。頭に手を置き、「ありがとう」と声をかけた。小松大谷が校歌を歌い、両校がベンチの片づけを済ませた。
試合終了から約1時間後。今度は早田君が、宮本君を目指した。「もう帰っちゃったかも」。小走りで向かうと、宮本君は一人、球場出入り口近くの地べたに座っていた。
早田君は「マジでがんばれよ。絶対に甲子園に行ってほしい。洸誠なら、打てるよ」と伝えた。宮本君は一言、「わかった」。2人は、笑顔で別々の方向へ歩いていった。(三井新)