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(24日、高校野球栃木大会 青藍泰斗8-7宇都宮工)

 タイブレークに入った延長十四回裏。宇都宮工のエース小林陽心投手(3年)が投じたのは自信のあるツーシーム。少し高く浮いた球は相手打者にとらえられて左前に。あっけない幕切れとなった。

 昨夏の準決勝。猛打の作新学院相手に好投。八回まで1点に抑えた。同点の九回裏。浮いた初球をスタンドに運ばれ、サヨナラ負けした。

 「あの瞬間を忘れた日はない。走者がいなくても試合は終わってしまう」。あれ以降、「一球の重み」が投球の芯になった。

 益子町の自宅から誰よりも早く練習に向かい、誰より遅くまで練習を続けてきた。「何も考えないで投げると負けてしまう」と手痛い経験から、とにかく一球一球、根気よく考えながら投げた。結果もついてきた。

 冬を越すと直球が安定し、制球力が増した。球速も140キロを超えた。春の県大会準優勝の栃木工を含め、今大会は3試合でわずか1失点。大会屈指の好投手に成長した。

 この日、立ち上がりを攻められ初回に5安打4失点。それでも二回以降は集中力を取り戻し、スコアに「0」を並べた。六回の満塁のピンチも三振で切り抜けて、おたけびを上げた。

 打線も土壇場の九回に同点に追いついた。

 試合後のインタビューでも、表情はぼうぜんとしたままだった。「なんて言っていいか分からない。これで終わりか、って…」

 「今日は不調じゃなかった。疲れも全然感じなかった。みんなと甲子園で野球をやりたかった」。涙で言葉を詰まらせていた。(平賀拓史)