米子北主軸打者の先制打、打席で考え事の「悪い癖」出ず

矢田文
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 24日の全国高校野球選手権鳥取大会は準々決勝2試合があった。境が米子北にサヨナラ勝ち、倉吉東が鳥取西を5回コールドで下し、4強入りを決めた。25日は休養日のため試合はなく、26日に準決勝2試合、27日午後2時から決勝がある。

(境4-3米子北)

 打席に入ると、ついつい余計なことを考えてしまう、自分の悪い癖がある。三回表、2死一、二塁、米子北の松田新大(しんだい)(3年)はこの日、2度目の打席へ入った。前夜に眠れないほどの緊張も1打席目を終えて少し和らいでいた。不思議と、この瞬間は考え事に意識は向かなかった。

 「アウトコースだけ振っていこう」。頭の中にはそれだけがあった。初球、それはいきなり来た。捉えた打球の弾道がやや低かった。捕球されるかと思ったがうまく抜けた。先制となる2点タイムリーとなった。

 投手もするが、打撃の方にも自信がある。だが、昨春にインフルエンザにかかり、70キロ以上あった体重は60キロほどに落ちた。打球の飛距離が落ち、スイングにも力が入りづらくなった。焦りから投球を磨こうとしたが、投げすぎて今度は肩を痛めた。昨夏はベンチから外れることとなった。

 悔しさはあったが自分を磨く期間だと言い聞かせた。落ちた体重を取り戻そうと、間食を増やした。食トレは苦手だったけれど、とにかく腹に詰め込んだ。昨夏の大会が終わる頃には70キロ近くに。冬場も体作りを徹底し、さらに10キロ近くの増量に成功した。「小さい体だったのに、今ではチームの主軸」と主将佐藤奨真(3年)もチーム一番の成長株に信頼を寄せる。

 境港一中出身の松田にとって、境は小中学校でともにプレーしてきたチームメートが多くいる相手だ。四回に交代した投手の岩本竜宝(りゅうた)(3年)もその一人。よく知っている相手だからこそ、「絶対に負けたくない」と強い気持ちが入った。だが、それが打席で考え事をしてしまう自分の悪い癖につながった。「どうやって打つんだっけ」。残り2打席は一本が出ず、あと1点に涙をのむ試合となった。

 「良い仲間に出会えたからできた良い試合だった」。そう言い聞かせるも、やはりこみ上げてくるのは悔しさだった。「あいつら(境)が甲子園に行って1勝でも勝てるように祈ってる」。夢をかつてのチームメートに託すと、大きな背中は小さく震えていた。(矢田文)

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