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 花巻東には、「160キロ」をめぐる因縁がある。

 連覇を狙う岩手大会決勝の相手は、高校史上最速163キロを誇る佐々木朗希(ろうき)を擁する大船渡。21日の大船渡の4回戦、佐々木が八回2死から相手3番へ投じた3球目が160キロと表示された。2012年夏の準決勝、同じ岩手県営野球場のスコアボードに同じ数字をともしたのが、当時花巻東のエースだった大谷翔平(現大リーグ・エンゼルス)だ。当時の高校生最速記録だった。

 そんな大谷を擁しても花巻東はこの夏、甲子園に出られなかった。盛岡大付との決勝に先発した大谷が、1本塁打を含む9安打を浴びて、3―5で敗れた。盛岡大付が重ねてきた大谷対策を実らせた形だが、そこには「あや」があった。

 今年6月、盛岡大付の関口清治(せいじ)監督に当時のことを聞いた。東日本大震災の翌年だったこの年、復興支援試合として7月23日にプロ野球のオールスターゲームが県営野球場で開催された。岩手大会の雨天順延も重なり、決勝は準決勝の1週間後と異例の間隔があいた。

 これが盛岡大付にとっては恵みの準備期間になったという。「大谷君が速いのは分かっていたけど、まさか160キロを出すとは思っていなかった。さらに速い球を打ち込むなど強化できた。準決勝の翌日だったら、違う結果になっていたかもしれません」。関口監督はそう振り返った。

 いま花巻東のウェートルームには、4月に佐々木が163キロを計測し、大谷の高校最速記録を更新した際の新聞記事が貼られているそうだ。佐々木を意識し、打撃マシン、打撃投手を約3メートル前に出しての近距離バッティングを例年より多く行ってきた。

 「ノーシードの大船渡といつ当たってもいいように準備をしてきた」と主将の中村勇馬。最速150キロのエース、西舘(にしだて)勇陽(ゆうひ)は「身近に日本一の投手がいることは意識して練習してきた。自分はスピードにはこだわりはないけど、チームを勝たせる投球をしたい」。

 160キロの大谷を打たれた花巻東は、佐々木を打つことができるか。(竹田竜世)