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(25日、高校野球島根大会 立正大淞南4―2松江工)

 「なに泣いとるや」。三回表、連続失策で勝ち越され、なお1死一、二塁のピンチ。松江工の先発中村和輝君(3年)は、伝令としてベンチからマウンドに駆け寄ってきた主将小室侑大君(3年)を励ますかのように笑顔で声をかけた。

 この回の守備は、先制された2点を取り返した直後だった。流れを相手に渡すまいと、チームに力が入る中、1死二塁からショート前に飛んだ打球が小室君の右手をはじいた。小室君は指の爪が割れ、無念の交代となった。

 その後の悪い流れに、伝令を志願した小室君は「ゲッツーをとればチェンジ。落ち着いてプレーしろ」と、涙を気にもとめず鼓舞した。中村君はそんな主将の姿を意気に感じた。「さらに点をとられたらキャプテンが責任を感じてしまう」。低めに投じたスライダーは三ゴロに。狙い通りの併殺を見届け、ヨッシャーと雄たけびを上げた。

 けがと向き合う3年間だった中村君。1年生の秋、右ひじを疲労骨折。集中して取り組んだ走り込みで下半身主導の投げ方を身につけた。今大会も時折ひじが痛み、思うように投げられない。それでもこの試合は力のある直球と低めに制球されたカーブ、スライダーの緩急で相手打線を翻弄(ほんろう)。8回を投げ自責点3と先発の役割を果たした。

 小室君は「最後の夏にふさわしいピッチングだった」と評価。悔しい敗戦にも、中村君は「今できる最高の投球ができ、悔いは無い」。涙は見せなかった。(清水優志)