ドラッグストア大手2社の店舗が、医師の処方箋(せん)を持っていない患者に不正に医薬品を販売していたことがわかった。北海道にあるツルハの店舗では約10年にわたって行われ、患者への対応をマニュアル化して薬局内で共有していた。ウエルシア薬局でも11都府県の23店舗で同様の不正が確認され、いずれも患者の要求に応じるかたちで行われていたという。(沢伸也、田内康介)

 医師の処方箋が必要とされる医薬品を、薬局が処方箋がないまま販売することは医薬品医療機器法が禁じている。処方箋が必要な医薬品は効き目が強い物が多く、副作用の危険性も高い。勝手に販売できれば健康被害につながるおそれもあるからだ。

 ツルハによると、北海道小樽市の「ツルハドラッグ小樽店」は2004年9月ごろ~14年5月ごろ、処方箋を持っていない患者に対して、脳梗塞(こうそく)を予防する薬や血糖値を下げる薬などを販売していた。同じビルにあるクリニックが休診の際、診察が受けられない患者の求めに応じていたという。どれだけの回数販売していたかは不明だが、クリニックの休診日に小樽店も休むようになったため、処方箋のない患者に販売しなくなったとしている。

「あくまでも堂々と」記載

 不正は今年4月、朝日新聞の指摘で発覚。ツルハは保健所に連絡したうえで、5月に立ち入り検査を受けたという。

 同店舗では、不正の際の患者への対応がマニュアル化されていた。

 朝日新聞が入手したマニュアル文書には、処方箋がない患者に薬を渡す際の対応として、「診断なく薬を出しているわけなので『やましいことをしている』という意識は必要」とし、「患者に『これはやましいことです』と伝えてはならない」「あくまでも堂々と、当たり前のように」などと記載されていた。

ツルハ側「本社の指示でない」

 また、患者から薬の副作用の訴えがあった場合の対応について、「こちらで副作用かどうかとか、(薬を)飲むべきか飲まないべきか」は「一切言わないように」とある。理由として「服用するかしないかは患者の判断」で、「そうしないとなにかあれば薬局が責任を負うことになる」と書かれていた。

 ツルハの担当者は「本社の指示ではなく、店舗が勝手に行っていた。誠に遺憾で、全店調査し再発防止策を進めていきたい」としている。

ウェルシア側「処方箋不要だと…」

 処方箋がないままの不正な販売は、ウエルシア薬局でも行われていた。

 ウエルシアホールディングス(本社・東京)によると、千葉県佐倉市の店舗で17年8月に医師から処方箋をもらっていない患者に医薬品を販売していたことが発覚し、千葉県から業務停止処分を受けていた。

 この問題を受けて、ウエルシアHDは同年10月ごろから18年2月ごろにかけて全店舗(1080店)に同様の事例がないか調査。14年から17年の3年間で11都府県の23店で処方箋のない患者35人(47件)に対し医薬品を販売していた。

 多かった事例としては、①病院が休診の際に患者から、血圧を下げる薬や、狭心症の発作が起きた時に使う薬などを要求されて販売してしまった②本来は処方箋が必要なのに処方箋が不要だと思い込み、生理食塩水やせき止めテープなどを販売してしまった――ことだという。

 ウエルシアHDは各保健所には報告済みだとしたうえで、「薬剤師への教育を強化するなど再発防止策を進めている」としている。

識者「薬剤師はただの『薬の渡し人』ではない」

 日本病院薬剤師会前副会長で、医療安全に詳しい土屋文人さんは「ずっと使っている薬でも副作用が出ることはあり、処方箋医薬品は医師の判断が必要という制度になっている。薬剤師はただの『薬の渡し人』になってはならない。安全性を保つためには、利便性を抑えざるを得ず、それを患者に理解してもらうのが薬剤師の役割だ」と話す。