バンコク=染田屋竜太
拡大する紙の発行をやめた、タイの英字紙ネーション=2019年5月17日、貝瀬秋彦撮影
約50年続いたタイの英字紙ネーションが6月末で紙面の発行をやめた。バンコク・ポストとともに2大英字紙としての歴史を持つが、経営悪化によりデジタル発信に専念することになった。タイのメディアで何が起こっているのか。探ってみると、匿名の「インフルエンサー」に押され、苦しむ既存メディアの姿があった。
ネーションは1971年創刊で、発行部数は6万~8万部(非公表)とされる。主にタイで暮らす外国人の情報源になってきた。しかし、2015年から2年間でタイ語新聞やテレビなどの部門を含めたグループ会社全体での売り上げが4割減るなど、業績が悪化。赤字経営の末、18年に別のメディア企業に買収された。
「紙の発行停止は予想されたことだった」。買収と同時期にネーションを退社したテプチャイ・ヨンさん(64)は話す。約30年間、記者などとして新聞づくりに携わり、最後は編集長を務めた。「ネーションは月に100万バーツ(約350万円)を失うような経営だった」とテプチャイさんは振り返る。
拡大するタイの英字紙ネーションで長年報道に携わった、テプチャイ・ヨンさん=2019年7月5日、バンコク、染田屋竜太撮影
何度も生き残り策が話し合われ、バンコク・ポストとの提携も検討されていたという。
「しかし、経営陣が代わって、…
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